慶応義塾大学メディアデザイン研究科は、放送と通信の融合時代におけるテレビのあり方について議論する「スマートテレビ研究会」を立ち上げる。機器メーカーや放送局、ビデオ・オンデマンド(VOD)事業者、ネットサービス事業者などに参加を呼びかけて、スマートテレビの定義やソーシャル連携、コンテンツのあり方などについて議論する。2011年内に5回の会合を開催し、国や関連業界に向けた提言を行う予定である。また社会的関心を高めるための情報発信として、デモンストレーションや実験なども実施予定である。座長は慶応義塾大学メディアデザイン研究科教授の中村伊知哉氏が務める。

 現在、NTTぷららと楽縁、ガラポン、スペースシャワーネットワーク、テレビ神奈川、東芝、ニワンゴ、ミクシィらが同研究会への参加を決定している。このほか、シンクタンク会社1社、コンテンツ事業者1社の参加も決まっており、約10社でスタートする。

 2011年内に開催する5回の会合では、「スマートテレビとは何か」「視聴体験の変化とサービスの理想像」「ソーシャル連携で何が変わるか」「カスタマイズで広がる世界」「コンテンツは進化するか」といった議論のテーマを予定している。初回会合は2011年8月30日に設立総会と併せて開催予定で、スマートテレビの定義やビジネスモデルの変化、制度・規格などについて議論する。このほかに情報発信企画の立案や、デモ/実験の実施などを目的としたワーキンググループも設置し、議論とデモの2本立てで活動を進めていく。10月にはインターネット中継を活用した情報発信を行うほか、2012年年明けにはシンポジウムを開催し、議論のまとめとしての提言を発表する。

 今回こうした研究会を立ち上げた狙いとして、「放送のデジタル化の完了や若者のテレビ離れが進む中で、ライフスタイルに合わせたテレビのあり方を議論する必要があると考えた」(メディアデザイン研究科と連携して研究会を取りまとめる融合研究所 研究員の新志有裕氏)と説明する。また、従来の考え方にとらわれずに議論するために、「ユーザー視点でのビジョン構築」という観点から自由に議論を行うという。具体的な議論の項目として、コンテンツの評価手法や、ネットサービスと放送の組み合わせによる番組を起点としたコミュニケーションの活性化──などを挙げた。