写真1●米エバーノートが初開催した開発者会議「Evernote Trunk Conference」
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写真2●国別のユーザー数では日本が米国に次いで2位
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写真3●手書きの描画ツール「Skitch」
写真3●手書きの描画ツール「Skitch」
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写真4●新ツール「Gallery」のユーザーインタフェース
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 米エバーノートは2011年8月18日(米国時間)、サンフランシスコ市内で開発者会議「Evernote Trunk Conference(ETC)」を開催した(写真1)。同社が開発者会議を開催するのは初めて。

 基調講演に立った同社CEOのフィル・リービン氏は、まず最新のEvernoteの利用動向を報告した。それによると、登録ユーザーは1250万8398人、アクティブユーザーは449万1490人、新規ユーザーは4万2324人で、いずれも前年の同時期に比べて200%を超える増加率だという。さらに大きな伸びを示しているのが有料の「プレミアムユーザー」。前年の9万2819人から6倍以上の56万8677人に達した。国別では日米2カ国が「2強」で、全ユーザーに占める割合はそれぞれ36%、27%である(写真2)。

 Evernoteユーザーは、利用期間が長くなるほど、プレミアムユーザーに移行する傾向にある。3年間継続して利用したユーザーのうち、プレミアムユーザーに移行した比率は23%に達するという。リービン氏は、Evernoteの製品設計方針が「時間を追って価値が増すこと」であると改めて紹介、実際のサービスでもユーザーが価値を認めてプレミアムに移行しているとした。「フリーミアムの時代にあっても、ユーザーは本当に好きなものには喜んで支払う」(同氏)と有料サービスの定着に自信を見せた。

 続いてリービン氏は会社や製品の方向性について語った。同社のゴールは、「100年存続する企業になること」だという。日本びいきの同氏は、「日本を訪れるといつも、新しく感化される」とし、その一例として内田洋行の本社を訪問したときのエピソードに触れた。同氏によると、内田洋行の本社ロビーには、100年の社史が示されており、1年ごとの活動が一覧できるようになっているという。このエピソードを熱く語りながら、エバーノートも同じような存在になりたいとした。

 また、製品についてはハンマーのように誰でも簡単に使えるものを目指すとし、キャッチフレーズに「正しいツールがあなたの脳を変える」を掲げた。

 基調講演では、今回のイベントに合わせて買収を発表した米スキッチによるアプリケーション「Skitch」を紹介した(写真3)。エバーノートが他社を買収したのはこれが初めてである。

 Skitchは、画像に手書き文字や記号を簡単に追加できるソフトウエア。リービン氏は、タッチパネル搭載端末が増えることで、この数年間に手書き電子メモが急激に増えると予測、Skitchのようなツールが次の時代のコミュニケーション、コラボレーションの基盤になるとした。講演では、これまで19.99ドルだったMac版を無料にすると同時に、Android端末向けアプリも提供することを明らかにした。

 終盤は、同社のこれからの活動を、今後数週間程度の「短期」、数カ月程度の「中期」、それ以降の「長期」に分けて説明した。

 短期の活動は具体的で、iPhoneやiPadにおけるリッチテキスト編集対応、iPad版のデザイン変更、Macの新OS「Lion」対応、Web Browser Clippersの提供などである。

 中期の活動として紹介したのが新しいツール「Galleries」(写真4)。最近のメモや写真、チェックインした場所などを一覧できるようにしたものである。ユーザーの好みに応じてカスタマイズできるほか、友人とも共有する機能を備える。これは、ユーザーの要求に基づいたものだという。

 開発者向けの活動としては、ウィジェットを中心に紹介した。開発ハッカソンを10月に開催、開発ツールを11月に提供するという。次の冬シーズンにはウィジェットの登場を見込む。

 長期的な目標は、Evernoteを、ユーザーがどこにいても簡単にネット経由でアクセスして生産的な活動が行える「ユビキタス・プロダクティビティ・プラットフォーム」にし、世界中の人に使ってもらえるようにすることだとして基調講演を締めくくった。