富士通は2011年8月18日、Javaアプリケーションサーバー・ソフトの新版「Interstage Application Server V10」を出荷した。新版ではマルチJava VM機能を強化し、フルGC(Garbage Collection)の発生時に該当Java VMを切り離す縮退運転によって、フルGCを発生させつつもレスポンスが悪化しないようにした。価格は55万円(税別)から。

 Interstage Application Serverは、富士通製のJavaアプリケーションサーバー・ソフトである。J2EE/Java EEの基本機能(Servlet/JSPとEJBの実行環境)やSOA/Web Service連携機構を中核に、エディションに応じて、レガシーアプリケーションなどを活用するためのCORBA/IIOP連携機構やCOBOL/C++実行環境などを提供する。

 最大の特徴は、1台のアプリケーションサーバー上で複数のJava VMとコンテナを動作させるマルチコンテナ構成を取れる点である。複数コンテナを用いてアプリケーションを多重実行させることで、クラスタリング構成と同様に、リクエスト負荷の分散によって処理性能を向上させたり、障害発生時の縮退運転によって可用性を高めたりすることができる。

 新版では、マルチコンテナ機能を高め、Java VMがフルGCを発生させる際に、該当のJava VMを縮退させて切り離すようにした。これを同社では「スマート・チューニング」機能と呼ぶ。この新機能により、フルGCによってレスポンスが低下する現象を防止できる。フルGCの予兆は、Java VMの過去のメモリー使用状況やGC状況に基づいて判断する。

 なお、フルGCとは、Java VMのメモリー管理機能であるGCのうち、システム停止などの性能低下を引き起こす大規模なメモリー解放処理を指す。Java VMでは、再利用するJavaオブジェクトをヒープ領域(メモリー領域)に格納するが、あまり使われないオブジェクトを退避させるOld領域が溜まると、一気にメモリーを開放するフルGCが起こり、システムに大きな負荷がかかる。

 新機能であるスマート・チューニングの具体的な処理の流れは、以下の通り。(1)個々のJava VMを監視し、フルGC発生の予兆を検知する。(2)フルGCを起こすJava VMでのリクエストの受け付けを停止する(クラスターから切り離す)。(3)ほかのJava VMで業務を継続する間に、切り離したJava VMでフルGCが起こる。(4)フルGCを終えたJava VMでリクエストの受け付けを再開する(クラスターに復帰させる)。

 代表的なエディションの概要と価格(税別)は、以下の通り。いずれも稼働OSはWindows、Linux、Solaris。

 (1)「Interstage Application Server Standard-J Edition V10」は55万円から。J2EE/Java EEの基本機能を提供する。(2)「同Enterprise Edition V10」は280万円から。Standard-J Editionの機能に加えて、CORBA/IIOP機構やCOBOL/C++実行環境を提供する。(3)「Interstage Business Application Server Standard Edition V10」は480万円から。Interstage Application Serverの機能上位製品に当たり、通信制御、データベース制御、トランザクション制御、ログ制御など、基幹業務向けの制御機能を標準で提供する。