シマンテックでプロダクトマーケティング部に在籍する浅野百絵果氏
シマンテックでプロダクトマーケティング部に在籍する浅野百絵果氏
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 データ・バックアップ製品を手がけるシマンテックは2011年8月10日、中小企業の災害対策を想定したバックアップ・ソフトの適用方法について、個々のシナリオに沿って説明した。同社製品の標準機能で実現できる最新の方法の一つとして、バックアップデータを遠隔地のクラウドストレージに複製する手法を紹介した。

 「中小企業や地方では、災害対策がとられていない」と、シマンテックでプロダクトマーケティング部に在籍する浅野百絵果氏は指摘する。かけられるコストなど企業ごとに異なる要件を考慮せずに、システムの二重化によってシステム停止時間をゼロにするなど完璧を求める傾向があるという。「データ・バックアップなどのように簡単に取り組める災害対策が浸透していない」(同社)。

 説明会では、企業ごとの要件の違いなどを踏まえたうえで、レプリケーションよりも導入が容易なデータバックアップ・ソフトによる災害対策のシナリオを、4段階に分けて説明した。いずれも、データバックアップ・ソフトとして、小規模向けでWindows環境用の「Symantec Backup Exec」と、比較的大規模向けの「Symantec NetBackup」を用いる。

 4段階の方法は、以下の通り。それぞれ、ほかの方法と比べたメリットとデメリットがある。(1)バックアップテープを遠隔地に搬送して保管する、(2)データを遠隔地に転送してバックアップする、(3)いったんローカルでバックアップしたデータを遠隔地に転送して複製する、(4)複製先としてクラウドストレージを利用する---、である。

 (1)最も手軽に始められる方法が、テープバックアップである。Backup ExecもNetBackupも、以前からテープを用いたスケジュールバックアップを簡単に運用できるようになっている。ただし、テープバックアップには、テープの搬送コストや保管場所の維持コスト、搬送時のセキュリティ、リカバリ時間が長くなるといった問題点がある。

 (2)テープの問題点を克服する手段として同社が挙げるのが、ネットワークを経由したバックアップである。業務サーバーのデータを遠隔拠点に設置したストレージにバックアップするものだ。Backup ExecとNetBackupが備えるクライアント側での重複排除機能を利用すれば、帯域が狭い場合でもネットワーク転送量を低く抑えることができる。ただし、ネットワークバックアップには、ネットワークの信頼性が低い場合にデータを確実にバックアップできないという問題がある。

 (3)ネットワークバックアップの信頼性を高める方法の一つが、いったんLAN上でバックアップをとってから、バックアップストレージのデータを遠隔地のストレージに複製する方法である。クライアント側での重複排除を使わなくても、バックアップサーバーやストレージ側で重複を排除したうえで転送することで、ネットワークに流すデータ量を減らすことができる。ただし、この手法では、ローカル拠点と遠隔地の両方にストレージを設置する必要があり、コストがかさむという問題がある。

 (4)バックアップストレージの複製先には、クラウドストレージという選択肢もある。安価なクラウドストレージを選ぶことで、自前でストレージを用意するよりもコストを下げられる可能性がある。ただし、クラウドストレージには、データの保全が自社内で完結しないことによる不安といった問題がある。なお、Backup Exec 2010 R3は標準で米Nirvanixのクラウドストレージを利用できるようにしている。