半導体大手のルネサスエレクトロニクスは2011年8月2日に開いた決算説明会で、東日本大震災での工場被災を踏まえたBCP(事業継続計画)の強化策を発表した。ルネサスの主力である那珂工場(茨城県ひたちなか市)は、建屋や生産設備の破損などで3月の震災発生から5月まで操業を停止。自動車向けマイコンの供給が止まったことにより、世界規模で自動車生産に支障が出ていた。

 ルネサスが公表した主なBCPの見直しポイントは、(1)那珂工場を含めた国内工場の耐震性能を高める、(2)生産拠点の分散や外部工場による代替生産体制を拡充する、(3)顧客に応じた在庫管理体制を取るなど。

 工場の耐震性能は、従来の震度6弱から東日本大震災と同レベルの震度6強まで耐えるための補強工事を実施。また今回、損傷が大きかったり復旧に時間がかかったりしたポイントを洗い出し、補強したり早期復旧の手段を用意したりする改善活動に取り組む。

 生産体制では、各商品の量産工場を2カ所以上用意する「マルチファブ化」に取り組むほか、被災時には外部協力工場でも製品を同品質で代替生産できる体制を拡充する。これら複数の生産拠点を連携させる取り組みを「ファブネットワーク」と呼んでいる。

 現在、主力のマイコンで回路線幅0.15マイクロメートル以下の製造プロセスで生産する品目のうち、主力工場以外で生産できる品目は8割。ファブネットワークの拡充で、2013年までにこれを9割に引き上げる計画だ。

 在庫や仕掛品の管理も見直す。これまでは生産途中の仕掛品や完成品の在庫は、一律の基準で量を調整していたが、これを購入先の顧客の要望などに応じて製品ごと、顧客ごとに条件を変えていく。在庫情報や代替品を選ぶための情報など、顧客への情報開示、情報共有も強化する。

 仕掛品や在庫の保管場所も被災リスクを考えて分散するなどの対応を取る。また半導体パッケージやシリコン基板などの材料調達でも、2次の供給元まで見通した上で複数調達を推進していくという。