写真1●日本HPが発売した水冷方式コンテナ型データセンター「HP POD 20c」
写真1●日本HPが発売した水冷方式コンテナ型データセンター「HP POD 20c」
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写真2●日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 インダストリスタンダードサーバー製品本部 サービスプロバイダー&HPC ビジネス開発の中井大士氏
写真2●日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 インダストリスタンダードサーバー製品本部 サービスプロバイダー&HPC ビジネス開発の中井大士氏
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写真3●日本HP 執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の杉原博茂氏
写真3●日本HP 執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の杉原博茂氏
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 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は2011年7月28日、東京で記者発表会を開催し、コンテナ型データセンター「HP Performance Optimized Datacenter(POD)」と、この導入に必要なコンサルティングや導入作業、保守などを行う総合サービス「HP PODプレミアムサービス」を発売したことを発表した。

 今回発売した機種は、利用可能な内部スペースの奥行きが20フィート(約6m)の水冷方式のコンテナ型データセンター「HP POD 20c」(写真1)。「国内のあらゆる場所に設置する可能性を想定し、外気温度の影響を受けにくく安定してIT機器を冷却できることから、空冷方式ではなく水冷方式の製品をまず投入することにした」(日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部の中井大士氏、写真2)。

 最大の売りは、「IT機器の収容能力(搭載密度)」と、それらを駆動させるための「電源容量の大きさ」だ。コンテナ内には、高さ50U(1Uは約4.4cm)のラックを10本設置できるスペースが確保されており、1Uラックマウント型のサーバーやネットワーク機器を最大500台搭載できる。これらIT機器を稼働させるために、最大で290kWの電力を供給可能となっている。

 この電力供給能力は、1ラック当たりに換算すると29kWになる。日本HPによれば、従来型のデータセンターでは1ラック当たり5kW程度であることが多く、50Uのラック1本をサーバーなどで埋めようとすると電源容量が足りなくなることがあるという。これに対してHP POD 20cでは、ラック1本に50台、コンテナ全体で500台の1Uサーバーを満載しても余裕で稼働できるとする。

 「例えば、地方自治体が遊休地を活用するためにコンテナ型データセンターを設置して市民にITサービスを提供しようとする場合、HP PODなら250台のサーバーを設置して容量500Mバイトのメールサービスを50万人の市民に提供するといったことがコンテナ1台でまかなえる」(日本HP 執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の杉原博茂氏、写真3)。

 コンテナ1台で500U分のIT機器を収容可能、ラック当たり29kWの電源容量というスペックは、国内で提供されている他のコンテナ型ラックと比較してもかなり優れていると日本HPは主張する。同社の調べによれば、国内の主要ベンダー4社が提供している20フィート級のコンテナ型データセンターの平均値は、収容能力が約300U、電源容量は約18kWだという。

最短6カ月間で立ち上げ可能

 コンテナ型と従来型のデータセンターを比較する場合、「電力使用効率(PUE)」と「立ち上げ期間」という二つの指標をよく使う。

 PUE(Power Usage Effectiveness)とは、データセンター全体の消費電力を、IT機器とそれ以外の設備がどのような比率で消費しているかを表す値で、数値が小さいほどIT機器を動かすための電力使用効率が高い、すなわち無駄が少ないことになる。

 HP POD 20cの場合、PUEは「1.25以下(1.05~1.25)」となっており、一般的な従来型データセンター(日本HPによれば2.0~2.4)と比較して最大で50%以上の電力使用効率改善を実現しているという。同社の試算では、HP POD 1台分(290kW)の電力を15円/kWhの電力コストで1年間使用した場合、PUEが2.0の場合と比べて1.25のデータセンターは、年間約2800万円のコストを削減できるという。

 立ち上げ期間を従来型データセンターと比べて圧倒的に短くできることもコンテナ型データセンターの大きなメリットである。日本HPによれば、従来型が24カ月(企画や設計に10カ月程度、施工やITシステム構築に14カ月程度)といった期間を要するのに対して、HP POD 20cは最短6カ月で立ち上げられるという。なお、HP POD 20cは米国ヒューストンにある専用工場「POD Works」で製造され、受注後約3カ月で納品可能だとしている。価格はオープン(非公表)。

 HP POD 20cと併せて発売した「HP PODプレミアムサービス」は、HP POD導入に必要なコンサルティングや導入作業、保守などを行う総合ソリューションサービスである。「HP/竹中データセンターアジリティサービス」「HP PODスタートアップサービス」「HP POD 保守サービス」の三つのサービスで構成する。

 このうちHP/竹中データセンターアジリティサービスは、「耐震/免震性能」や「セキュリティ要件」など日本の事情に合わせたコンテナ型データセンターの導入を実現するために、日本HPが大手ゼネコンの竹中工務店と協力して提供する。ユーザーのニーズを想定したテンプレートを用意することで、立ち上げまでの期間を短縮できることなどを売りとしている。

 具体的には、日本HPがデータセンターとIT機器の設備や設計に関するコンサルティングを実施し、これと並行して竹中工務店が既存資産の評価や関連施設の建設、設備の設計・施工などを行う。関連施設や設備の完成後は、日本HPがIT機器の設置を担当し、竹中工務店が周辺設備の保守を受け持つ。価格は「個別見積もり」。

 二つ目のHP PODスタートアップサービスは、HP PODを稼働させるのに必要な各種機器のセットアップや、HP PODおよびIT機器の動作確認などを提供するサービス。価格はコンテナ1台目が1480万5000円、2台目以降は882万円。三つ目のHP POD保守サービスは、年4回の定期点検作業や故障時の部品提供、オンサイト故障修理対応などを含む保守サービス。価格は年額910万3500円。