写真1●楽天の赤桐壮人 グループシェアードサービス開発・運用部マネージャー
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写真2●パイプドビッツの遠藤慈明 マーケティング本部マーケティング部ディレクター
写真2●パイプドビッツの遠藤慈明 マーケティング本部マーケティング部ディレクター
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写真3●ヤフー R&D統括本部 プラットフォーム開発本部 ソーシャルネット開発部の島貫和也氏
写真3●ヤフー R&D統括本部 プラットフォーム開発本部 ソーシャルネット開発部の島貫和也氏
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 迷惑メール対策技術「DKIM」(DomainKeys Identified Mail)の普及を目指す業界団体である「Japan DKIM Working Group」(略称:dkim.jp)は2011年7月26日、同団体に参加している国内の主要なメール送信事業者11社が「送信メールのDKIM対応」を完了したことを発表、これに合わせて都内で記者向け説明会を開催した。

 dkim.jpが今回発表した「送信メールのDKIM対応」とは、対象となる事業者自身が送信するメール、あるいは対象事業者のユーザー向けメール関連サービスから送信するメールすべてに対して、「DKIMに基づく電子署名」を付加して送信できる体制が整ったということを意味している。実際に送信するメールに対してどの程度DKIM署名を付けるかは、個々の事業者の判断に任せられている。

 具体的に、対応完了を宣言したのは、アットウェア、エイケア・システムズ、エイジア、HDE、シナジーマーケティング、トッパン・フォームズ、パイプドビッツ、プロット、ユミルリンク、楽天、レピカの11社。dkim.jpによれば、これら11社が配信するメールのトラフィックは、メールマガジンや広告宣伝メールなどに関する国内の全メールトラフィックのうち、「正確な数字は公表できないが、数パーセントではなく数割というオーダー」(dkim.jpの議長を務める楽天の赤桐壮人 グループシェアードサービス開発・運用部マネージャー、写真1)を占めているという。

 今回、国内の主要な送信事業者11社がDKIMを使ったメール送信への対応を完了したことにより、dkim.jpの関連企業や組織はもちろん、同種のサービスを提供している他の送信事業者のDKIM対応も加速するだろうとdkim.jpでは見ている。また、受信するメールに対するDKIM署名率が高まっていくことにより、メール受信側(プロバイダや自社でメールサーバーを運用する企業ユーザーなど)におけるDKIM対応の広まりも期待できるという。

今後はメール受信側の対応拡大が鍵

 実際のところ、DKIMを普及させる上で今後鍵となるのが後者のメール受信側のDKIM対応である。DKIMはメール送信側と受信側の双方が対応して初めて、メールの送信元(ドメイン名)が正しい(=なりすましが行われていない)ことを検証できる仕組みが成り立つものだからだ。国内で配信されるメールの多くがDKIM署名付きになったといっても、メール受信側のプロバイダや企業ユーザーがDKIMを採用しなければ、「絵に描いた餅」が出来上がったに過ぎない。

 ただ、そのためにもまず今回の送信事業者側のDKIM対応が重要だったとdkim.jpは強調する。「この手の技術を普及させるケースではしばしば見られる構図だが、DKIMに関しても『送信側が導入しないからDKIM署名付きメールが増えない、DKIM書名付きメールが増えないから受信側がDKIMに対応しない、受信側がDKIMに対応しないから送信側がDKIMに対応しない』という堂々巡りの状態に陥っていた。この状態を打破して普及率を高めるために、比較的導入しやすい送信側の導入を率先して進める必要があった」(パイプドビッツの遠藤慈明 マーケティング本部マーケティング部ディレクター、写真2)。

 今後、受信側でもDKIMへの対応が進み、DKIMという技術が普及するとメールユーザーにとって様々なメリットが得られるようになるとヤフー R&D統括本部 プラットフォーム開発本部 ソーシャルネット開発部の島貫和也氏(写真3)は説明する。「例えばWebメールの場合、DKIM署名付きの受信メールに対してのみ特別なアイコンを表示するといったことが比較的簡単に実現できる。実際に米国ではこの仕組みをフィッシング詐欺などの対策として使うケースが出始めている」(島貫氏)。

 また、現在では大量の迷惑メールを送信するメールサーバーをブロックするために、IPアドレスベースのレピュテーション(評判による格付け)を実施しているケースが多いが、実質無限個のアドレスが使えるIPv6が今後普及すると、こうしたIPアドレスベースのレピュテーションが難しくなっていくという見方がある。「DKIMが普及することにより、IPアドレスベースよりも確実なドメイン名ベースのレピュテーションを活用できるようになる点も大きなメリットになる」と島貫氏は指摘していた。

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