写真●JTB情報システム 経営企画部業務推進グループマネージャーの内藤邦彦氏
写真●JTB情報システム 経営企画部業務推進グループマネージャーの内藤邦彦氏
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 「クラウドの導入効果は、システム管理が楽になることだけではなかった。システム部門の役割や部員一人ひとりの仕事に対する意識が大きく変わってきた」。2011年7月20日に都内で開催された「Systems Management Forum 2011 Summer」で、JTB情報システムの経営企画部業務推進グループマネージャーである内藤邦彦氏が「運用最適化の“壁”はこう乗り越える」と題して基調講演に登壇。国内に導入事例がほとんどない段階からクラウドの本格利用に挑戦してきたJTBグループの”舞台裏”を詳しく語った。

 まず内藤氏は、社内のメールシステムを米グーグルのパブリッククラウドサービス「Google Apps」にリプレースする戦略的プロジェクトについて、完遂までの軌跡を紹介した。これは、JTBがクラウドを利活用する先駆けとなったプロジェクトである。内藤氏はJTBのシステム部門のメンバーとして、同プロジェクトに参画していた。

 JTBがパブリッククラウドの採用を検討し始めたのは2007年。背景には、既存のメールシステムに運用面の課題が山積していたことがある。メールが重要な業務ツールになるにつれて、社内の利用者から、メールボックスの容量アップやアーカイブ化へのニーズが高まっていた。これに応えるためにメールシステムを強化していくうち、システム構成も複雑になり、処理性能の維持やセキュリティの確保といった運用管理の負担が日増しに大きくなっていた。さらに経営層からも、コスト低下や構築期間の短縮といった要請が出ていた。

 内藤氏は当時について「利用者にとっての利便性を追求するだけでは運用の負担が増えるばかりで、会社全体にとって最適なシステムにはならない。一方でコスト削減にこだわり過ぎると、十分なサービスレベルを維持できなくなる。利用者、システム担当、経営層のそれぞれにメリットがあるような手立てがないものだろうかと悩み、模索する毎日だった」という。