写真●プライスウォーターハウスクーパースの内田士郎代表取締役社長(撮影:皆木優子)
写真●プライスウォーターハウスクーパースの内田士郎代表取締役社長(撮影:皆木優子)
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 「Gゼロの国際経済で生き残るためには、競争力ではなく“共創力”と“競創力”が必要だ」――。2011年7月14日、都内で開催されたイベント「IT Japan 2011」で、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の内田士郎代表取締役社長(写真)が「低度成長時代からの日本企業のレジリエンス」と題して講演した。

 内田社長はまず、日本企業を取り巻く現在の環境に言及。日本の実質GDP(国内総生産)は、2010年第3四半期以降マイナス成長を続けており、東日本大震災や原発事故の影響も手伝って2011年もマイナスが続くと予想される。「中長期的には少子化、団塊世代への年金支払いなど、日本の経済成長を妨げる様々な課題が山積みだ」。

 また、IMD(国際経営開発研究所)が発表した2010年の世界競争力ランキングを見ると、日本は「経済状況」が27位なのに対して「政府の効率性」は50位。2項目の順位の乖離幅は、ブラジルに次いで世界で2番目に大きい。「日本は経済成長が見込めない上に政治がビジネスの足かせとなっている。もはや、日本企業にとってグローバル化は選択肢の1つではなく必須のものだ」。

 内田社長は、これからの時代のグローバリゼーションでは、あるパラダイムシフトが起こると分析する。「G7に新興経済国が加わってG20になったが、次の世代は『Gゼロ』だ。これまでのように経済大国が世界経済の指導者になるのではなく、各国が各々の国益を主張する世界になる」。

 各国の利害調整がより難しくなる中、グローバル展開した日本企業がビジネスを継続するのに必要なことは、弱肉強食の奪い合いをする「競争力」ではない。「他国の企業とコラボレーションしてビジネスを成長させる『共創力』、ポジティブな競い合いによって新しい市場を創出する『競創力』こそが、これからの日本企業に必要な能力だ」。