写真●シスコシステムズの平井康文代表取締役社長(撮影:皆木優子)
写真●シスコシステムズの平井康文代表取締役社長(撮影:皆木優子)
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 「経営品質の向上を支える仕組みのコアとしてのネットワークが重要だ。インターネットは今、コミュニケーションの基盤になっている」。2011年7月14日、都内で開催中のイベント「IT Japan 2011」で、シスコシステムズの平井康文社長(写真)は「経営品質を高めるビジネスプラットフォーム~ネットワークがもたらす価値~」と題して講演した。

 平井社長はインターネットの実力を示す数値を例示した。インターネットの利用人口は世界20億人、主要13カ国のGDPに占めるインターネット関連産業の割合は3.4%になっているという。こうしたインターネットはもはや「電子メールなどのメディアではなく、コミュニケーションの基盤そのものになっている」と平井社長は強調する。

 コミュニケーションの基盤となっている一例として平井社長が挙げたのが、東日本大震災の避難所でネットワークを敷設した際の話だ。シスコでは避難所に電話やインターネットを敷設する復興支援を実施している。ある避難所でボランティア向けにWiFiを導入したところ、避難していた子供たちから歓声が上がった。ボランティア向けに導入したWiFiに子供たちが持っていた携帯ゲーム機が自動的に接続し、避難所の子供たち同士が携帯ゲーム機で通信できるようになったのだった。それまで子供たち同士の交流はあまりなかったという。平井社長は「小さいけれどうれしい話だった」と振り返る。

在宅勤務でも業務に支障が出ない時代に

 在宅勤務でもインターネットがコミュニケーション基盤であることが実証された。シスコは東日本大震災が発生直後の2週間、社員を在宅勤務にしていた。この時、「自宅待機だった企業と、自宅で業務を進められる在宅勤務だった企業では大きな差が出たはずだ」と平井社長は指摘する。シスコは「在宅であっても通常通りに、コミュニケーションをとりながら業務を進められるように準備していた」(平井社長)という。

 シスコは希望する社員にIP電話やWebカメラ付きのTV会議システム、さらに会社と同様のネットワーク環境を再現するアクセスポイントを配布している。TV会議システムはパソコンだけでなく、iPhoneやiPadのようなモバイル端末からも利用できる。平井社長は会場でiPadでプレゼンテーションとTV会議の画面を共有するデモを披露し、「モビリティの高いワークスタイルを実現することで、外出先であっても通常と同等の業務ができるようになる」と説明した。

 ただし在宅勤務を実現するめには「ツールを導入するだけではダメだ」と平井社長は話す。平井社長が在宅勤務を含んだワークスタイルの変革に必要だと訴えるのは、「共感」と「人事制度」だ。

 共感について平井社長は「全社員がワークスタイルの変革に共感できる企業文化を醸成しなければ成功しない」と断言する。在宅勤務などの場合、上司と部下が離れて仕事をすることになる。その際に「お互いに信頼できなければ、仕事が進まない。信頼にはワークスタイルの変革に関する価値観を共有できていなければならない」(平井社長)。もう一つ必要なのは人事制度の整備だ。ワークスタイルの変革に必要な、ルール作りをするなどして初めて「新しいワークスタイルが生まれてくる」と平井社長は強調した。