写真●富士通の山本正已 代表取締役社長
写真●富士通の山本正已 代表取締役社長
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 「ICTの進化は、人と人とのつながりや企業の活動、社会の在り方に新たな拡がりをもたらしつつある。ビジネスと社会の発展を両立させ、人にやさしいインテリジェントな社会を目指していく」。都内で開催中のイベント「IT Japan 2011」の講演で、富士通の山本正已 代表取締役社長(写真)は2011年7月14日、このような考えを示した。

 日本を取り巻く経済環境はこれまでになく厳しい。今年の下期に景気は回復するが、国際的には「低体温」の状態が続くため、日本の競争力を強化するための取り組みが必要という。山本氏は日本に「ものづくり」「絆」「財政」「食」「エネルギー・環境」「交通」「医療・介護」という七つの分野における課題があると指摘する。これらはもともとあったものだが、震災によって一気に顕在化した。

 ただし、これらの課題は実は、先進国が共通に抱えているものだという。「解決できれば世界に先駆けることになり、事業として国際展開できる。それによって試練がチャンスに変わる」と山本氏は語る。

 解決のカギの一つは、ICTの進化である。ICTでは指数関数的な性能向上がある。今の携帯電話は30年前のスーパーコンピュータと同じ能力がある。その爆発的に進化した力を活用して人に寄り添うコンピュータが実現し始めた。山本氏は人が中心となるICTのあり方を「Human Centric」という言葉で説明した。

 また、このように進化したテクノロジーは幅広い分野でパラダイムシフトを起こすという。山本氏は「消費者と企業の関係」「意思決定の革新」「イノベーションの加速」「公共サービスの革新」「企業と社会の関係」を挙げた。

 例えば、「消費者と企業の関係」においては、マーケティング戦略が変化。一方的な情報提供の比重は低くなり、顧客と対話しながらマーケティングを行う「共創の時代」を迎えるという。

 「イノベーションの加速」においては、スーパーコンピュータによってより複雑・大規模な課題の解決が可能になる。同社が理化学研究所と共同で開発している「京(けい)」というスーパーコンピュータを使えば、自動車の衝突シミュレーションでは、車体だけでなく人体の要素も含めた計算が可能になる。

 山本氏は、このようなパラダイムシフトを生かして目指すべき社会が「Human Centric Intelligent Society(人にやさしいインテリジェントな社会)」であるとした。重要なのはビジネスと社会の発展を両立させることであり、「富士通はお客様のビジネス変革と社会課題解決をサポートすることで、本当の復興と再生を実現していく」と語った。