写真●アレックスの辻野晃一郎代表取締役社長兼CEO(撮影:皆木優子)
写真●アレックスの辻野晃一郎代表取締役社長兼CEO(撮影:皆木優子)
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 「日本人よ、リスクを取れ!」。2011年7月14日、「IT Japan 2011」最後の特別講演「新しい国造りを目指して、SONYとGoogleで学んだことを活かして」で、アレックスの辻野晃一郎代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者、写真)はこう訴えた。

 辻野社長はグーグル日本法人の元代表取締役社長であり、その前はソニーでパソコン「VAIO」やホームビデオ、パーソナルオーディオなどのカンパニープレジデントを歴任した。そこで学んだことを披露しつつ、「震災という国難を新しい国造りの転機にせよ」と切り出した。

 辻野社長はグローバル化が進む現在、「あらゆることの再定義が始まっている。ネット以前の20世紀的な発想は今すぐやめよ」と話す。クラウドコンピューティング環境ではソニーが得意としてきた家電製品や、日本を代表する工業製品である自動車でさえも「新しいITデバイス」として再定義され始めているという独自の見方を示した。

 今後勝ち残るのは個々のデバイス性能を高めたところというよりも、「“生態系”とでもいうべき社会のシステム全体をデザインして消費者に受け入れられた企業だ」と力説した。その点において日本企業は遅れを取っており、日本のポジショニングが世界的に見て下がっていることに危機感を募らせている。

 だが日本人は「自信を失うことはない」とも言う。今をときめくアップルやグーグルの経営者たちは一様に、かつてのソニーに敬意を表しているという。「そのことを我々日本人自身が忘れすぎている」と辻野社長は見る。

 ここでいうかつてのソニーとは、「人と同じことはやらない企業」だったときのソニーを指す。辻野社長は「まずはリスクを取ることから始めよ」と語り、聴衆に新しいことにチャレンジするように促した。

 幸い、今のクラウド環境では大きな組織に属していなくても、大きなコンピュータパワーを利用できる。あとは20世紀的な発想をガラッと変え、「日本の次にアジア、そして世界進出と考えるのではなく、最初から一気に世界を目指してほしい。まるで宇宙から地球を見るかのような視点に立ち、インターネットのおかげで“小さくなった地球”を相手に、国境など考えずに発想してほしい」と語った。

 そのとき何より大事なのは「スピードだ」とも言い、インターネットの時代は何事も「走りながら考えよ。やらないことが最大のリスクだ」と言って、IT Japan 2011の最後を締めくくった。