写真●アクセンチュアの程近智社長(撮影:皆木優子)
写真●アクセンチュアの程近智社長(撮影:皆木優子)
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 「IT部門の人材の1割しか海外で使えないので困っていると、経営層から相談を持ちかけられることが増えている」――。アクセンチュアの程近智社長は2011年7月14日、「IT Japan 2011」の講演で、日本のIT部門の危機をこう表現した(写真)。程社長は「再点検:ICTの力を活用する前に覚悟すること」と題して講演した。

 程社長は「日本国内に市場はないため日本企業の再編は進む。日本人の技術者や実際に動くシステム、システム開発会社などは確実に減っていく」と断言。また、海外で売れる製品を作るためには、「地産地消の考え方が必要で、販売部門だけでなく研究開発部門やアフターサポート部門も海外に出ていかなければいけない」と説いた。ITはそうした環境変化に対して、効率化をさらに進めたり、変化を経営層が手に取るようにわかるよう可視化したり、柔軟な企業体質を実現させたりすることを求められているという。

 だが、「今の日本企業のIT部門ができるのはこのうち効率化だけ」と程社長は指摘する。自分たちも変わるんだという覚悟や決断が足りないという。例えば、マーケットに合わせてITの使い方を変えることを決めているかどうか。先進国では既存ビジネスの効率化をさらに突き詰める一方で、新興国では朝令暮改でビジネスを進められるようにクラウドを使った早いシステム開発をするといったことを決めていく。

 総花的になりがちなIT投資も、「国内か海外か、コアかノンコアか」といったように「トレードオフを考えることが肝要」と話す。同様にIT部門の役割は、「経営に参加したいのか、業務プロセスを改善したいのか、ITで自社製品に味付けをしてさらに売れるようにしたいのか、それともIT導入のプロになりたいのかといった立ち位置を決めなければいけない」と説く。同じように、IT部門と外部パートナーとの関係、ITエコシステムとIT部門の関係などにもメスを入れて、覚悟を持つことが大事であると説いた。

 こうした覚悟を持たなければIT部門やシステム子会社は世界で通用しない存在となり、冒頭のような経営者の悩みにつながる。程社長は覚悟を決めさせるためには「アウトサイド・イン」が有効と話す。これは、日本以外の国で海外要員を使ってシステムを開発・運用したうえで、海外拠点から導入していき、最後に日本に導入するというものだ。日本人は出張で海外拠点まで出向き、英語で開発を続ける。そのなかで、開発プロセスやスピード、品質の考え方をグローバル基準で鍛えてもらえるメリットもあるという。「IT部門が一気に変わるためには、いっそ国内での開発はゼロにして、すべて海外で開発するぐらいのショックが必要かもしれない」。程社長は“荒療治”の必要性も示唆して講演を締めくくった。