写真●タニタの谷田千里代表取締役社長(撮影:皆木優子)
写真●タニタの谷田千里代表取締役社長(撮影:皆木優子)
[画像のクリックで拡大表示]

 「“はかる”技術で社員の健康管理を強化することは、当社の成長にとって必要不可欠だ」。ヘルスメーター製造大手 タニタの谷田千里代表取締役社長(写真)は2011年7月14日の「IT Japan 2011」で「企業の成長は社員の健康から ITで『はかる』を管理し付加価値向上」と題して講演。IT(情報技術)を活用しながら社員の健康管理を図るユニークな取り組みを語った。

メタボリック放置は企業リスク

 谷田社長は、ヘルスメーターなどの製品を製造販売するだけではなく、そこで培った様々なノウハウを自社社員の健康管理に生かそうとしている。「福利厚生の一環であるとともに、コスト削減やリスク管理の狙いもある」と谷田社長は説明する。メタボリックシンドロームは高い医療費を要する病気や、突然死などの予備軍になる。こうしたリスクの芽を摘もうとしているわけだ。

 そのための取り組みの1つ目は社員食堂だ。独自の日替わり定食を出す社員食堂は様々なメディアに取り上げられて既に有名。このレシピを書籍化した『体脂肪計タニタの社員食堂』(大和書房)はシリーズ2冊で219万部を突破し、料理本としては異例のベストセラーになっている。

 タニタ社員食堂の定食は平均500キロカロリー前後。煮物は硬めにして良くかまないと食べられないようにするなど、低カロリーでも腹持ちするように工夫されている。一般的な家庭の食事や外食の800~900キロカロリー程度なのに比べて、1食当たり300~400キロカロリー分少なく、出勤日が22日だとすると6600キロカロリー分を抑えられる。このカロリー分の脂肪を運動で落とすには、ランニングなら10時間分以上が必要だという。

 ただし「営業担当者など外勤が多い社員は社員食堂を使えない」(谷田社長)という課題があった。そこで2つ目の取り組みとして、2009年1月から本社に所属する全社員約300人を対象に「タニタ健康プロジェクト」を始めた。

 このプロジェクトでは、社員に自社製の体組成計と歩数計を使ってもらい、Web上の健康管理サービス「からだカルテ」で計測データを追跡する仕組みを運用した。社員に日頃から体重や歩数に対する意識を持ってもらうことで、社員の平均体重は開始時の76.4キログラムから半年後に72.8キログラムまで減少した。

 ただし、その後さらに追跡調査したところ、1年後にリバウンドしている社員もいたという。「ダイエットでは食事による摂取と、運動などによる消費のバランスが重要だ」(谷田社長)。2011年度は活動量計や尿糖計といった新技術も併用して「メタボゼロ」を目指す。

「ニコニコ動画」ユーザーが強力な支援者に

 インターネットを使ったファン作りの施策にも言及した。谷田社長は「タニタは中高年世代では一定の認知度があるが、もっと若年層にアピールする必要があった」。そこで2008年12月にニコニコ動画に公式チャンネル「Come Sta Channel(コメ・スタ チャンネル)」を設けた(関連記事)。当時、ニコニコ動画に公式チャンネルを設ける企業は珍しかった。

 現在、同チャンネルの会員数は約7000人に上る。タニタは体脂肪計・体組成計でトップシェアを誇るが、売上高120億円ほどの企業規模で、大手家電メーカーに比べて広告宣伝のために割ける人員は少ない。「ニコニコ動画で当社のファンを作ることができた。当社がメディアに取り上げられたり、新製品が大手通販サイトで販売開始されたりした情報をすぐにキャッチして書き込んでくれる。ニコニコ動画のユーザーは本当にありがたい」と谷田社長は話す。