写真●インテルの宗像義恵 取締役副社長(撮影:皆木優子)
写真●インテルの宗像義恵 取締役副社長(撮影:皆木優子)
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 インテルの宗像義恵取締役副社長は2011年7月13日、「IT Japan 2011」で、企業のIT活用を支援するために、インテルが取り組んでいる施策や構想について紹介した(写真)。IT Japan 2011は日経BPが主催するIT分野の総合セミナーで、2011年7月12日から都内で開催中である。

 まず紹介したのが、モビリティの支援。モビリティとは、ノートPCなどのモバイル機器を活用して仕事の生産性や質、事業の継続性を高めることを指す。

 日本ではノートPCの普及率が高いが、こと企業においては社員がノートPCを社外に持ち出して積極的に活用しているとは言い難い。「紛失や情報漏洩の懸念から、ノートPCの持ち出しを禁止している企業が少なくない」(宗像副社長)からだ。

 実際には社員はノートPCを社外に持ち出して活用したいし、企業としても安全な仕組みさえ確立できれば許可したい。そこでインテルではPCのセキュリティや運用管理性を向上させるための技術「vPro」を開発し、2006年からPCメーカーに提供している。今年はその次世代版をリリースした(関連記事)。携帯電話回線を通じてPCを遠隔制御する技術や、ワンタイムパスワードを使って認証する機能を追加した。

 併せてインテル社内では以前から、ノートPCの持ち出しを可能にする仕組みや、自宅勤務を可能にする仕組みをvProなどの各種技術を使って構築。モビリティの向上が業務にどう貢献するかを実証しているという。

 その仕組みの効果は、3月11日に発生した東日本大震災の時に実証できたという。「社員には自宅勤務が指示されたが、普段からノートPCを家に持ち帰って仕事をするスタイルが当たり前だったので、特に混乱もなく業務が継続できた」(宗像副社長)という。

 世界各地のインテルでも同様の先例がある。宗像副社長は2004年と2008年にオレゴンで発生した雪害、2005年に香港などで広がったSARS、2008年の四川大震災、2010年にアイスランドで起きた火山噴火などの例を列挙。「災害時にも自宅待機をしながら業務を続けられる仕組みがあったので、業務への影響を最小限にとどめることができた」と語る。

柔軟で使いやすいサーバーインフラを実現

 次に触れたのが、クラウドコンピューティングについての取り組み。インテルが掲げているビジョン「クラウド2015」について紹介した。

 クラウド2015は、大きく三つの柱で構成する。(1)シームレス連携、(2)自動化、(3)クライアント認識である。

 (1)のシームレス連携とは、パブリッククラウドかプライベートクラウドか、どの企業のサービスを利用しているかといったサーバーインフラの種類や運用形態にかかわらず、データやサービスを簡単に連携したり移動できることを指す。

 (2)の自動化とは、サーバーリソースの監視、確保、再配置、セキュリティの確保といった、サーバーの運用管理性を向上させる取り組みを指す。運用管理の自動化を進め、人手がなるべく要らないような仕組みの実現を目指す。

 (3)のクライアント認識とは、PC、スマートフォン、タブレットや組込機器など、エンドユーザーが利用する多様な機器に対応する取り組みを指す。クライアント端末の種類に応じて、クラウド側のサービスを自動的に最適化するような仕組みの実現を目指す。

 宗像副社長は「プロセッサメーカーの立場から、ユーザー企業やエンドユーザーがサービスやデータを安全に、かつ確実に利用できるような仕組みを提案したい」と語る。

 ビジョンの実現に向けた布石の一つが、業界団体「オープン・データセンター・アライアンス」の設立である。この団体は米インテルが2010年秋に設立したもので、BMWやJPモルガン・チェース、ドイツ銀行など全世界約70社のユーザー企業が参画している。

 この団体の目的は、ユーザー企業の視点から、次世代のクラウドインフラに必要なハード製品やソフト製品の要件を策定し業界に提案していくことである。インテルはアドバイザーとして団体にかかわり、実際の製品やソリューションの実現に向けて活動するという。「ユーザー企業の声をベースに、新しいクラウドコンピューティングのあり方を考えて提案していく」(宗像副社長)。