写真●日本ユニシスの黒川茂代表取締役社長(撮影:皆木優子)
写真●日本ユニシスの黒川茂代表取締役社長(撮影:皆木優子)
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 「オンプレミス、SaaS、PaaS、プライベートクラウドなどITの選択肢の幅が広い時代になった。企業は、各々の戦略や環境に応じて最適なITを選択していかなければいけない」---。2011年7月13日、都内で開催中のイベント「IT Japan 2011」で、日本ユニシスの黒川茂代表取締役社長(写真)が講演した。

 黒川氏は、今年6月に代表取締役社長に就任した。1974年に日本ユニバック(現 日本ユニシス)に入社し、経営層に入る以前はシステムエンジニアとして主に金融業の顧客先に常駐していた期間が長かった。客先で直接ユーザーの声を聞いてきた黒川氏は今、ITに対する顧客の要望の変化を感じているという。「昔は、顧客の要求通りの予算で、要求通りの仕様に作られたシステムが“良いIT”とされていた。しかし今は、独自性や競争優位性を維持しつつも、俊敏な改革・価値創造が可能なITが求められている」。

 黒川氏は、「自社開発システムが主流だった時代と比較して、ITサービスの選択の幅が広がった今、企業は自社のITシステムを業務単位で細分化して、各々の業務に最適なITサービスを選択していくべきだ」と考える。「細分化した各々のシステムについて、独自性が必要なのですべて自社開発するもの、PaaS/IaaSを利用してアプリケーションだけ開発するもの、差別化要因にならないのでSaaSやパッケージソフトを利用するものなど、企業全体の戦略と照らし合わせてポジショニングしていく作業が必要だ」(黒川氏)。

 黒川氏の説明では、例えばインターネットバンキングのシステムは、メガバンクやネットバンクにとってはサービスの根幹となるシステムであるため、各社とも独自開発して差別化を図っている。一方、地方銀行や信用金庫にとっては、それが競争優位の要素とならないため、ASPサービスを利用している場合が多いという。

 ただし、「地銀や信金は、外為や投資信託サービスの独自性は競合他社との競争力になるとして、戦略を転換しつつある。また、独自機能が組み込めるパッケージソフトの登場によって、メガバンクやネットバンクでも自社開発しないケースが出てくるだろう」。黒川氏は、このように戦略やITの変化に応じて、その選択は常に見直していく必要があるとしたうえで、「当社は、個々の顧客の戦略に合致したITのポジショニンングと再ポジショニングを提案していく」と述べた。