写真●ミニストップの阿部信行 代表取締役社長(撮影:皆木優子)
写真●ミニストップの阿部信行 代表取締役社長(撮影:皆木優子)
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 「便利な機能も普段から利用していないと、危機的状況では使えない」。2011年7月12日から都内で開催中の「IT Japan 2011」で、ミニストップの阿部信行 代表取締役社長(写真)はこう強調した。

 ミニストップは東日本大震災で約30店舗が営業不能、うち2店を津波で失う事態に遭った。こうした危機的状況で阿部社長が「最も活躍した」と評するのがテレビ会議システムだ。導入は3年前。以来、同社はテレビ会議システムで本社と各拠点を結んで日常的に会議を開いていた。「テレビ会議システムの利用が当たり前になっていた」。

 震災後もこの仕組みを生かし、被災地の状況を逐一把握できるようにした。「電話やメールだけだと被災地で何が起きているのか肌感覚で分からない。テレビ会議を使えば、たとえ現地にいなくても社員の状況をリアルタイムで見られる。非常時は正しい情報をスピーディーに得られる体制を整備することが重要だ」。

 その反面、十分に機能しなかったツールとして、阿部社長は発注業務などをこなすハンディーターミナルの簡易レジ機能を挙げた。簡易レジ機能とは、停電などでPOSレジが使えなくなったときにハンディーターミナルがレジに早代わりするというものだ。本来、こうした機能は非常時にこそ効果を発揮すべきだが、「使い方を十分に理解できていない店舗ではあまり使われなった」。

 こうした経験を踏まえ、ミニストップは加盟店に対する教育研修を強化していくことはもちろん、「非常時に備えて準備したツールについては、操作方法などをできるだけシンプルにしていく必要がある」とする。

 また、テレビ会議システムなどのITツールと並んで、阿部社長が災害時の事業継続で留意すべきと言及したのが組織体制だ。ミニストップは震災から1週間以内に、物流や店舗復旧といった単位で四つほどのプロジェクトチームを立ち上げ、権限も委譲した。

 「非常時は最初こそトップダウンでもいいが、状況が見えた段階で権限委譲すべきだ。自立的に動ける体制を整えてこそ、迅速な復旧が可能になる」。