写真●NECの岩波利光 代表取締役執行役員副社長兼CMO(チーフマーケティングオフィサー)(撮影:皆木優子)
写真●NECの岩波利光 代表取締役執行役員副社長兼CMO(チーフマーケティングオフィサー)(撮影:皆木優子)
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 「3月11日の東日本大震災では当社グループも被災した。この震災を機に、これからのICTインフラに求められるものを再認識した」---。NECの岩波利光 代表取締役執行役員副社長兼CMO(チーフマーケティングオフィサー)(写真)は2011年7月13日、「IT Japan 2011」の講演でこう語った。

 岩波副社長は震災でのNECの被災状況を説明した。NECネットワークプロダクツの一関本社や、NECパーソナルプロダクツ米沢などグループ全体で30社、77拠点が被災した。一部拠点では建屋が損傷したという。岩波副社長は震災の対策本部長に就き、情報の収集や対応の指示に当たった。

 被災した拠点では、「大きな揺れにより売店に設置してあった自動販売機が倒れるといった被害があった。だが、過去に東北で起きた地震の経験から、工場設備を固定したり、耐震補強を施していたため、生産設備は壊れなかった」(岩波副社長)。そのため、3月23日には全生産拠点で生産を再開した。

 岩波副社長は今回の震災から、これからのICTインフラには、大量データを収集・解析する「予測」、事業継続のために普段からクラウドサービスなどを利用する「予防」、データ保護や在宅勤務などの「バックアップ」の三つが求められることを再認識したという。

 これらを意識しながら災害に強いICTインフラを構築するためには、「いまできること、次のアクション、の2段階に分けて取り組むべき」(岩波副社長)とした。今できることとして、安全なデータセンターへのシステムの移設、在宅勤務推進のためのシンクライアントの導入などを、次のアクションとして、クラウドサービスの活用や回線のバックアップ、ビデオ会議の導入などを挙げた。

 クラウドサービスを活用する際に役立つNECの技術として、ネットワーク制御技術「OpenFlow」を実装したスイッチを紹介した。同製品は、ネットワーク機器を一元的に制御したり、実行する処理内容によって構成を変えるなど、ネットワーク制御の柔軟性を高めるためのものだ。NECが今年3月、世界で初めて製品化した。

 岩波副社長は、「NECの強みはものづくりの力だ」と語った。「現在はソフトウエアでかなりのことができる。だが海底ケーブルや人工衛星など、ソフトウエアを使う前提となる『もの』は必ず必要だ。そういった『もの』を作る力が当社にはある」と続けた。