写真●「IT Japan 2011」で講演する野村総合研究所の藤沼彰久取締役会長(撮影:皆木優子)
写真●「IT Japan 2011」で講演する野村総合研究所の藤沼彰久取締役会長(撮影:皆木優子)
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 「ハードウエアやソフトウエアの進歩で『ビッグデータ』の市場が離陸しつつある。さらに、FacebookやTwitterなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及でインターネットにはデータがあふれている。ここをうまくマーケティングに使える企業は大きく伸びるだろう」。

 2011年7月13日、野村総合研究所 取締役会長の藤沼彰久氏(写真)が「IT Japan 2011」で講演し、大量のデータを分析して将来予測などに役立てる「ビッグデータ」の可能性について語った。今後はネット業界のみならず、スマートシティ、通信業界、小売業界、金融・保険業界と幅広い業界でビッグデータの活用が進むという。

 藤沼氏はビッグデータを「既存の技術では管理できないほどにボリュームが増え、複雑化したデータ」と定義する。容量ではT(テラ)バイトからP(ペタ)バイト級で、従来のリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)では格納できない非構造化データが大半を占めるという。

 FacebookやTwitterなどSNSが生みだす大量の情報から、スマートメーターなど各種センサーが出力するデータ、コールセンターへの問い合わせ履歴まで「ビッグデータ」に含まれるという。「ビッグデータの中身は玉石混淆だが、適切にマイニングすれば将来予測に生かせる。データ分析の用途が『現状分析』から『将来予測』へと進化する」(藤沼氏)。

 こうしたビッグデータの興隆を支えるのが、ハードウエアとソフトウエアの進化だという。年を追うごとに性能アップと低価格化が進行していたハードと比べてソフトの進化は遅れていたが、大規模分散システムを実現するオープンソースソフト「ハドゥープ(Hadoop)」の登場でハードウエアの性能を生かせるようになった。

 藤沼氏は、Hadoopを活用した面白い事業の例として米フライトキャスター社のサービスを挙げた。米国の航空会社が出発便の遅延を発表する6時間も前に、独自の遅延予測を提供してくれる。過去10年の航空便データと、気象情報やFAA(米連邦航空局)の発表を元に遅れを予測する。Amazon EC2上でHadoopを活用しているという。

 講演後の公開質問では、「ビッグデータを分析するためデータウエアハウス(DWH)/ビジネスインテリジェンス(BI)を導入したものの、使いこなせていない企業が多い。導入したシステムを適切に活用するには何が必要か」との問いが投げかけられた。 これに対して藤沼氏は「ビッグデータの活用は、試行錯誤の繰り返しになるだろう。ソーシャル系がからむと特に難しい。マーケティング部門とシステム部門が切磋琢磨し、小さな成功を積み重ねることから始めてほしい」と語った。