写真●セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次 代表取締役社長(撮影:皆木優子)
写真●セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次 代表取締役社長(撮影:皆木優子)
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 「消費者の反応をダイレクトに経営判断に生かせる“ソーシャル・エンタープライズ”を実現できるかどうか。それが企業ユーザーにとって大きな課題になりつつある」---。

 2011年7月12日、セールスフォース・ドットコム代表取締役社長の宇陀栄次氏(写真)は「IT Japan 2011」で講演し、Facebookに代表されるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やTwitterなどのマイクロブログを企業が活用していくべきとの考えを示した。「顧客や販売現場の反応を直接取り込んで整理し、企業のトップに迅速に届ける手段として有効だ」と、宇陀氏は話す。

 宇陀氏は講演の中で「企業のITシステムに対する優先度にパラダイム・シフトが起こっている」と強調。従来は、業務系システムへの投資を最優先とし、その次にデータウエアハウスなどの情報系システムにも力を注ぐという企業が少なくなかった。一方で、イントラネットやグループウエア、ホームページといったフロント系システムは業務系や情報系のシステムに比べれば優先度が低かった、と宇陀氏は指摘する。

 だが現在は、さまざまなビジネス領域で市場構造が急速に変化しており、多くの企業が事業戦略の見直しを迫られている。またSNSの利用拡大に伴って、市場に対する一般消費者の「声」の影響力も、見過ごせないほど大きくなってきた。こうした状況では、業務系システム上のデータだけでは適切な事業判断が困難になりつつあるという。このため「販売代理店やコンタクトセンターからの情報はもちろん、SNSなどで発信される消費者の『声』を積極的に社内に取り込むことで、迅速な経営判断や商品開発などにつなげる企業が増えている」と、宇陀氏は分析する。

 続いて宇陀氏はソーシャル・エンタープライズの大型事例として、トヨタ自動車を挙げた。同社は2011年5月に米セールスフォース・ドットコムとの提携を発表。セールスフォースがクラウド上で提供している企業向けブログサービス「Chatter」を基に、トヨタが自動車向けのSNSを開発していくとしている。

 Chatterのようなサービスを企業が本格利用する際には、安全かつ安定したクラウドインフラが欠かせない。ただし現状は、クラウドに対してセキュリティやサービス品質の面で不安を感じている日本企業が少なくない。

 こうした見方を宇陀社長は「当社のインフラは日々監査を受けており、セキュリティ面でも最高の人材を揃えて対処している。クラウドに懸念を抱く顧客企業のインフラよりもずっと安全で安定している」と一蹴する。その上で「今後はより多くの企業がソーシャル・ネットワークを利用して情報発信していくようになる。この流れを敬遠するだけではもったいない。顧客と直接つながる新たなメディアと前向きに捉えて活用を検討していくべきだ」と主張した。