写真1 学生たちを前に情熱的に語るスティーブ・バルマー氏
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写真2 左からメンター小板隆浩先生、石川勇樹さん、田中志樹さん、今入康友さん、今井祐介さん
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写真3 左から芝原達哉さん、西脇春名さん、メンター内田健先生、田中天さん、河村辰也さん
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写真4 メンバーの部屋で実機説明の練習をするチームSunDonation
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写真5 メンバーの部屋でプレゼンテーション練習をするチームMI3
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写真6 審査員を前に10分プレゼンテーションに臨むチームSunDonation
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写真7 ブースで審査員に実機説明をするチームSunDonation
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写真8 審査員を前に20分プレゼンテーションに臨むチームMI3
写真8 審査員を前に20分プレゼンテーションに臨むチームMI3
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 今年はニューヨークが舞台です。マイクロソフトが主催する学生技術コンテスト Imagine Cup、その2011年の世界大会が7月8日からホテル「 New York Marriott Marquis Times Square」で開幕。日本からも、ソフトウェアデザイン部門に同志社大学のチームMI3、組み込み開発部門に混成チームSunDonationが日本代表として参加し、自ら作り上げたソリューションを武器に、世界との戦いに挑みました。

 9回目の世界大会となる今年、Imagine Cupの規模はさらに大きくなっていました。第1回大会が全登録者数で2,000名、参加した国と地域は25程度であったのに対し、現在では登録者は183の国と地域から計35万名を超え、世界大会へやってきた出場者の国と地域を数えるだけで70に上ります。会場となるホテルには、400名を超える国籍多彩な学生が行き交い、大会前日から早くも熱気が立ち上り始めました。ますますオリンピックめいてきたような気がします。

 初日の7月8日には、ホテルのカンファレンスルームでオープニングセレモニーが開催されました。Imagine Cupを統括するマイクロソフト コーポレーション アカデミック プログラム ジェネラル マネジャー ジョン・ペレラ氏やニューヨーク市の教育担当幹部が登壇、国内大会を勝ち抜いてやってきた学生たちを歓迎。なかでも学生たちが熱狂したのは、マイクロソフト・コーポレーション CEO ステイーブ・バルマー氏が登場した瞬間でした(写真1)。

 バルマー氏は、これが最初のImagine Cup参加であることを詫びながら、学生たちとの出会いを情熱的に喜び、国連のミレニアム開発目標に向けて彼らが提案しているシステムはどれもすばらしいと高く評価しました。同氏はまた、マイクロソフトがこれから注力していくテクノロジーとして、クラウド コンピューティング、次世代デバイス、ナチュラル ユーザ インタフェースの3つを挙げて学生にさりげなくアピール、そしてXbox Kinectを世界大会出場者全員にプレゼントする大盤振舞を発表、学生から喝采を浴びました。さらに自分の人生を引き合いに出しながら、“生きる時代が異なるからその人生は私とは違ったものになるだろうが、アイデアが肝心で、不可欠なのは情熱で、しつこくやり続けることが重要だということはいつの時代も変わらない”と学生たちを鼓舞しました。

前日深夜までプレゼン練習に没頭した日本代表チーム

 ソフトウェアデザイン部門の一次予選では、4人の審査員に対して20分間の英語プレゼンテーションを行い、その後10分間の質疑応答に臨みます。今回、ソフトウェアデザイン部門に出場しているのは67の国と地域。そこからまず一次予選で18チームに絞られます。ここ数年、日本の悲願はこの一次予選突破です。

 一方、組み込み開発部門の一次予選では、まず4人の審査員に対して10分間の英語プレゼンテーションを行います。質疑応答はありません。その後、ブースに設置した実機を使って、3人の審査員に対して英語プレゼンテーションを行います。ここでも質疑応答はありません。。つまり、一次予選はプレゼンテーションだけでシステムの概要と重要性を伝えるのです。その一次予選には20チームが参加。二次予選に進めるのは15チームです。

 一次予選開催は7月9日。チームSunDonation(写真2)、チームMI3(3は上付き文字、写真3)とも、その前日、全員参加のオープニングセレモニーをはさんで、ほぼすべての時間をプレゼンテーション練習に費やしました。

 チームSunDonationが提案しているのは、新しいスタイルの寄付金提供システム「SunDonation」です。ローカルでは、組み込み用OSであるWindows Embedded Compact 7を搭載したeBoxとタッチパネルを用い、寄付金やユーザーのタッチ情報などを管理するサーバ・システムはWindows Azure上で運用します。

 飲食店などに設置されたタッチパネルにユーザーが触れると、広告が流れます。それを視聴することによってユーザーは無線LANのアクセスキーを取得でき、店内でインターネットが利用可能になります。SunDonationは広告主と交わした契約に応じて、広告料金の一部の金額を寄付金としてNPOに納め、その実績はSunDonation上で確認することができます。

 会場入りして時間をかけたのは実機説明練習でした(写真4)。ホテル客室の一部を実機ブースに見立てて、マイクロソフトスタッフやチームメンターが審査員役を務め、メンバーが本番さながらに説明します。この時点では説明が10分間に収まっていませんでした。実機の技術説明に焦点を絞るか、それともソリューションの有効性を語るために飲食店やユーザーからの賛同コメントをビデオで見せるか。また、将来計画として持っている顔認証技術に言及すべきかどうか。メンバーは悩ましい選択に迫られていました。

 チームMI3のシステムは、「Dr.One」といって、医療インフラが未発達で医療リテラシーの低い南アジアや中央・南アフリカを対象に開発された医療支援システムです。こうした地域でも携帯電話の普及率は高まっているため、Windows Azure上にインストールした総合診療という分野ですでに構築済みの医療データベースを使って、ユーザーが携帯電話でシステムとSMSによるテキストメッセージを交換しながら初期医療診断を受けます。一般的な200程度の病気であれば90%の精度で診断可能だといいます。

 具体的には、ユーザーが携帯電話でシステムが指定するアドレスに“頭が痛い”などとメールを送信します。頭が痛くなる場合にあらわれる他の症状をナイーブベイズ・アルゴリズムを使って抽出し、ユーザーに次の質問文として返信します。ユーザーはそれに対し、Yes、Noで答えていくと、システムが徐々に病気を絞りこんでいきます。

 MI3の発表担当は、田中志樹さんと石川勇樹さんです。彼らは本番での沈黙を回避するため紙の原稿を本番まで離さないことを決めていました。その状態でできるだけ自然なプレゼンテーションをめざしたのですが、課題は質疑応答でした。英語で発せられる審査員の質問を理解してうまく答えることができるかどうか。リーダーの今井祐介さんが数十の想定問答集を用意していたものの、審査員役を立てた前日の模擬練習ではまだ少し回答に苦労していました(写真5)。