東京工科大学がクラウド基盤を使って、学生向けのプログラミング実習環境の整備に取り組んでいる。2011年9月から、コンピュータサイエンス学部に在籍する2000人強の学生を対象にした、プログラム開発・実行環境の運用を開始する。2011年7月11日、クラウド基盤の開発に協力している日本IBMとともに発表した。

 このクラウド環境は、同大学が開講するプログラミング実習講座用のシステムとして使う。この講座はこれまで3年生を対象にしており、受講人数は約40人を想定していた。これからは受講対象を全学年2000人強に拡大する。実際の受講人数としては最大で600人程度を想定している。

 クラウド環境の特徴は、すでに学内で構築し運用しているプライベートクラウドと、日本IBMが提供するパブリッククラウドを連携させたハイブリッドクラウドにしたこと。これにより、学生向けの開発・実行環境を効率的かつ柔軟に提供できるようにした。

 具体的には、授業の時に学生が使う開発・実行環境については、パブリッククラウド側から提供する。開発・実行環境を仮想サーバーとして学生一人ひとりに用意する格好だ。授業を始めるときには大量のコンピュータ資源が必要になるが、逆に授業が終了した後には必要なくなる。このため、日本IBMが用意する従量課金型のパブリッククラウドを採用した。

 一方、自習および課題用の開発・実行環境は、学内に構築済みのプライベートクラウド側から提供する。これも同じように、開発・実行環境を仮想サーバーとして学生ごとに用意する。自習や課題の作成については、学生が年間を通して常に一定量のコンピュータ資源を使うことになるので、プライベートクラウド側から提供することにした。

 学内のプライベートクラウドは2009年10月から「授業クラウド」として運用中である。日本IBMと共同で構築した。授業前に受講者分の仮想サーバーを自動的に確保し、終了後には自動的に解放するという仕組みを備える。学生一人あたり約2時間程度かかっていた開発・実行環境の準備作業が不要になり、講座の初回から本格的なプログラミング実習に取りかかれるようになったという。

 今回のハイブリッドクラウド型の仕組みを構築したきっかけは、対象を3年生から全学生2000人強に拡大するため。東京工科大学の試算によれば、5年間のTCO(総所有コスト)で比較した場合、既存のプライベートクラウドを増強する場合に比べて、約60%コストが削減できる。

 東京工科大学は学生がよりプログラミングしやすい環境を用意することで、学生の開発スキル向上を促す。