台湾VIA Technologiesは現地時間2011年7月6日、同社の米国子会社であるグラフィックスチップメーカーのS3 Graphicsを台湾のスマートフォンメーカーHTCに売却することで、HTCと最終合意したと発表した。すでにVIA Technologiesと、同社会長が大株主の投資会社WTI Investment International、そしてHTCの3社の取締役会で承認されており、今後は規制当局の承認を経て2011年内にも買収手続きを完了する見通し。

 HTCは発表資料を出していないが、米メディア(Bloomberg)は、この取引でHTCは、S3 Graphicsが保有する235件の特許を取得することになると伝えている。

 S3 Graphicsは、テクスチャー圧縮方式「S3TC(S3 Texture Compression)」として知られる技術に関する特許を保有しており、米Microsoft、ソニー、任天堂などにライセンス供与している。これらの特許を巡っては2011年7月1日に米国際貿易委員会(ITC)が、米Appleによる2件の特許侵害あったとする仮決定を下している(関連記事:ITC、AppleがS3 Graphics特許を侵害との判断、最終決定は11月)。

 一方で、AppleはiPhoneのユーザーインタフェースなどに関する特許がHTCに侵害されたとして訴えており、HTCも5件の特許がAppleに侵害されたとして反訴するなど、両社の法廷闘争は続いている(米国際貿易委、HTCの要請に応じてAppleのiPhoneなどを調査へ)。

 HTCのWinston Yung最高財務責任者(CFO)は特定の特許係争についての言及は避けたが、「(S3 Graphicsの)特許ポートフォリオを取得することは我々にとって有意義だ」と述べたとBloombergは伝えている。

 なお今回のS3 Graphicsの売却金額は3億ドル。HTCは、VIA TechnologiesとWTI Investment Internationalに対し、それぞれ1億4700万ドルと1億5300万ドルを支払う。VIA Technologiesによると、S3 Graphicsは2001年にVIA Technologiesが買収した後、2005年に資金不足に陥り、WTI Investment Internationalから資金調達を受けていた。

[VIA Technologiesの発表資料]