写真●日本オラクルの情報可視化ソフト「Oracle Manufacturing Operation Center(MOC)」の画面例
写真●日本オラクルの情報可視化ソフト「Oracle Manufacturing Operation Center(MOC)」の画面例
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 新日鉄ソリューションズ(NSSOL)とオムロン、日本オラクルの3社は2011年7月6日、製造業を中心とした企業の電力需要を抑制するための対策立案を支援するクラウドサービス「電力ピーク削減ソリューション」を始めると発表した。生産情報と電力消費量データを組み合わせて可視化することで、事業継続性(サスティナビリティ)と節電の両立を図るための着手点などが明らかになるという。

 電力ピーク削減ソリューションは、オムロンのセンシング技術と日本オラクルの情報可視化ソフト「Oracle Manufacturing Operation Center(MOC)」(写真)を組み合わせ、NSSOLが運用するクラウド環境「Absonne(アブソンヌ)」から提供するサービスである。利用企業は、工場や倉庫、オフィスビルなどに各種センサーを設置して電力消費量を測定し、データをクラウドに送信することで、全社横断的に電力の使用状況を把握できるようになる。

 同ソリューションでは、生産管理システムなどが持つ生産実績と電力消費量データを組み合わせることで、設備の稼働状況と電力消費の関係を可視化できるのが特徴の一つ。両者を重ね合わせることで、例えば一つのラインにおいて、ボトルネックがあるために待機状態にある設備による電力消費の存在などが浮かび上がってくるという。そうした部分から節電に取り組めば、生産能力への影響を最小限に抑えられるというわけだ。

 オムロンの川北陽一郎環境事業推進本部顧客開発部コンサルティング課長は、「生産に直接結び付いていない『非付加価値エネルギー』と呼べる消費電力が存在する。これまでは、納期や品質といった尺度からラインを最適化してきたが、エネルギーの観点を入れると、従来とは異なる改善策やものづくりの発想が求められるようになる」と指摘する。

 オムロンのある工場の例では、非付加価値エネルギーが全体の40%強を占めていたケースがある。対象設備に、待機時には自動停止させられるようにスイッチを追加したり、タイマー設定により停止させたりといった対策を打つことで、総電力消費量を10%前後は削減できるという。

 集計した情報は、ライン単位だけでなく、工場やビルなどの施設単位、あるいは組み立て部門や梱包部門、倉庫部門といった組織単位でも管理・参照できる。また、あらかじめ設定した電力供給計画に基づき、電力消費量が超過した際にはアラートを出すことも可能だ。

センサーデータのデータモデルを移植

 オムロンはこれまで、工場のラインなどを対象に各種センサーや集計ツールなどをCO2削減用途などで販売してきた。現実には、現場担当者による電力削減ツールとしての導入が中心だった。ただ、ライン単位などのデータ分析はできたが、全社単位やグローバル単位でのデータ集計ができなかった。

 2009年から、オムロンは日本オラクルと共同で省エネ関連アプリケーションの検討を開始。2010年秋にはオムロンが持っていたデータモデル「SSDM(Sustinability Sensor Data Management)」をMOCに移植し、非付加価値エネルギーを自動算出できるようにした。今回、この仕組みをNSSOLのAbsonneに乗せることで、クラウドサービス化した。

 電力ピーク削減ソリューションの利用料金は、1ユーザー当たり月額数万円になる模様。ユーザーには、集計結果などを参照し判断する担当者などを想定している。電力測定に必要なセンサーは1個5万円から、最大124個のセンサーを束ねる集約装置が1台20万円である。部門別やフロア別などで集計する際には、それぞれにセンサーを置かなくても、総量から計算によって部門別/フロア別の消費量を割り出す「バーチャルメーター」の仕組みを利用できる。