写真●自見庄三郎金融担当大臣
写真●自見庄三郎金融担当大臣
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 金融庁は2011年6月30日、企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議を開催した。IFRS(国際会計基準)そのものを日本の会計基準として採用する強制適用について議論を開始した。審議会の冒頭で自見庄三郎金融担当大臣(写真)は「IFRSを強制適用する場合は少なくとも5~7年の準備期間が必要。国際情勢も変わっていることから、中間報告の見直しが必要になる」と改めて強調した(関連記事:「2015年3月期からのIFRS強制適用はない」、金融担当大臣が明言)。

 審議会では冒頭、新任の委員の挨拶があった。甲南大学特別客員教授の加護野忠男氏や日本労働組合総連合会副事務局長の逢見直人氏、テルモ取締役名誉会長の和地孝氏、三菱電機常任顧問の佐藤行弘氏などが新たに企画調整部会の委員となった。

 その後、自見大臣の発言を受けて産業界、学者、監査業界、アナリスト、会計基準の策定側といった様々な立場の委員が意見を述べた。今回はそれぞれの立場から意見を出すにとどまり、明確な方向性は打ち出さなかった。自見大臣は審議会に最後まで出席し、委員からの意見を熱心に聞いていた。大臣が審議会終了まで出席するのは異例のことだ。

 自見金融担当大臣が見直しが必要になると言及した中間報告は、金融庁が2009年6月に日本のIFRSの強制適用の方針について示した「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」を指す。自見大臣は中間報告について、(1)連結先行の考え方、(2)任意適用のあり方、(3)証券市場のあり方、を主な検討課題として指摘した。

製造業を中心とした産業界から、見直しを求める声

 委員からはIFRSの強制適用について様々な意見が出た。製造業の委員からは5月25日に金融庁長官宛てに提出された「我が国のIFRS対応に関する要望(要望書)」について解説があった。

 要望書の賛同企業の1社である三菱電機の佐藤氏は、「米国がIFRSの強制適用についてきちんとした手続きを踏んでいるように、日本も丁寧な議論をするべきだと考えた」と説明。要望書には21社が署名している。佐藤氏は「今年に入り、賛同した企業からこのままIFRSの強制適用が進んでいいのかという不安の声が上がったのが要望書を提出したきっかけだった」とした。

 要望書では、(1)上場企業の連結財務諸表へのIFRSの適用の是非を含めた制度設計の全体像について、国際情勢の分析・共有を踏まえて、早急に議論を開始すること、(2)全体の制度設計の結論を出すのに時間を要する場合には、産業界に不要な準備コストが発生しないよう、十分な準備期間(例えば5年)、猶予措置を設ける(米国基準による開示の引き続きの容認)ことなどが必要、の二つを求めている。

 製造業からはこのほかに、「日本のものづくりは保守主義の下、企業のゴーイングコンサーンを大切にして成長してきた。原則主義のIFRSは経営者が本質を理解していないと判断を誤る。IFRSの強制適用は国益を損なう」(テルモの和地氏)といった意見も出た。