写真●KVHのリチャード・ウォーリー最高経営責任者
写真●KVHのリチャード・ウォーリー最高経営責任者
[画像のクリックで拡大表示]

 「我々は単なる通信事業者ではなく、ネットワークとクラウドを統合した『情報デリバリー・プラットフォーム』の事業者として変革する」--。KVHのリチャード・ウォーリー最高経営責任者(写真)は、2011年6月29日に開いた事業戦略説明会で、こう今後の戦略を語った。

 リチャードCEOによれば、企業の情報管理体制は「情報量の爆発的な増加と、システムの複雑化、運用効率の改善」という三つの課題に直面している。「社内運用では限界に近づいており、外部へのアウトソーシングをどう活用するかが重要になる」と指摘する。そして、「重要な社内データを外部へ預ける上で重視すべきなのは、仮想化技術による運用の効率化だけでなく、データセンターからネットワークまで含めたエンド・ツー・エンドのセキュリティだ」と続けた。

 そこで、これらのサービスを統合して提供する「情報デリバリー・プラットフォーム」の事業者を目指す。「金融業界向けに低遅延、高信頼の回線を提供してきた実績と、現在強化しているクラウド事業を組み合わせることで、通信事業者やクラウド事業者それぞれが単独では実現できないトータルソリューションを提供する」(リチャードCEO)。

 そのための体制として2011年2月に、首都圏で二つ目となるデータセンター「KVH TDC2」を開設した。最大1万6000平方メートルまで床面積を拡張できる。さらに5月には、仮想サーバーや専用サーバーをオンラインで発注してから最短15分で利用可能な「Cloud Galaxy」を開始し、クラウド事業の強化を急いでいる。ネットワーク面では、現在10Gbpsまでカバーする超高速専用線を、年内にも100Gビット/秒までアップグレードする計画だという。

 同社は2015年度までに売上高を現在の2倍まで拡大することを目標に掲げている。そのため、従来の主要顧客である外資系企業や金融業界などに加えて、国内のSaaS事業者など、同社のデータセンターをプラットフォームとして活用するユーザーを開拓していく考えだ。

 また、国際データ通信も成長領域と見なしており、アジア地域へ進出する企業のサポートを強化する。「シンガポールや香港といった国々の金融市場のシステムと東京の拠点を、超高速、低遅延のネットワークで結ぶニーズが伸びている」という。2011年中にシンガポールにも拠点を開設し、直接ユーザーをサポートすることも計画している。