「企業は『Nスクリーン』を使いこなすユーザーの動きに注視すべきだ」。モバイル分野の調査・コンサルティング会社、ROAホールディングスの宋国憲取締役はこう語る。同社は2011年6月29日に「Nスクリーン時代のスマートデバイス」と題したセミナーを開催。宋取締役はスマートフォンやタブレット端末の普及が個人ユーザーの動向にどう影響するか、それが企業のビジネスにどう波及するか、分析結果を説明した。

 まず宋取締役はここ1~2年の個人ユーザーの動きとして、「Nスクリーン」化を挙げる。スマートフォンやタブレット端末の普及により、携帯電話、タブレット端末、PC、テレビといった格好で、1ユーザーが同時に複数の“画面(スクリーン)”を所有し使うことがめずらしくなくなった。

 もう一つ挙げたのが、コンテンツやサービス重視の動き。通信キャリアの競争激化やAndroid OS搭載機器の普及によって、個人ユーザーの関心は「どの通信キャリアか」というよりは、「(その端末の上で)どんなコンテンツやサービスが利用できるか」という点に移りつつあるという。

 この結果、個人ユーザーの間では、例えば「携帯電話でダウンロードしたコンテンツをタブレット端末やPCでも楽しみたい」、あるいは「いまテレビで見ている番組の内容について、携帯電話で詳細情報を見たい」といった、一歩進んだニーズが顕著になりつつある。通信キャリアや消費者向けのビジネスを展開している企業にとっては、「たくさんのスクリーンを使うユーザーに対して、いかに便利で、いかに体験豊かなアプリケーションを提供できるかが、差異化の大きなポイントとなる」(宋取締役)。

 韓国の大手企業は、こうしたNスクリーン化を意識した戦略を採っているという。例えばLG電子は「LG U+Box」という個人ユーザー向けのクラウドサービスを提供中だ。写真、文書、動画、音楽といった個人ユーザーが保有するコンテンツをデータセンターのサーバー側で保管し、それらを携帯電話やパソコン、デジタルフォトフレームなどで再生する機能を持つ。またVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスも付いており、映画やドラマなどをPCやスマートフォン上で視聴できるという。

 宋取締役は「Nスクリーンを使いこなす『スマートユーザー』に注目し、その期待に応えようとする企業が、今後市場で主要な位置を占めるようになるだろう」と語る。