「全世界のIPトラフィックは年率32%の割合で増加している。2015年にはゼタバイト(ZB)に突入する」(写真1)---。シスコシステムズ合同会社の堤浩幸サービスプロバイダー事業副社長(写真2)は、2011年6月28日に開催した同社の記者説明会でこのように語った。

 シスコは毎年、世界のIPトラフィックのトレンドを把握するために「Cisco Visual Networking Index(VNI)Forecast」という調査を実施している。6月にその最新版を公開した。その調査によると、2010年に1カ月当たり約20.2エクサバイト(EB、ペタバイトの10の3乗倍)だった世界のIPトラフィック総量は、2015年には80.5EBに急拡大すると予測する。年換算すると966EBとなり、その上の単位となるゼタバイト(ZB、EBの10の3乗倍)が見えてくる形だ。

 ゼタバイトは、値が大きすぎて簡単にはイメージできない。堤副社長は「机の上のコーヒー一杯が1ギガバイト(GB)とすれば、1ZBは万里の長城の容積に匹敵」と表現する。

 これだけ急激にトラフィックが急拡大する一方、インフラを支える通信事業者は大きな課題に直面している。インフラへの要求が急拡大しているにもかかわらず、ビット当たりの収益が低下し、収益がインフラを支えきれなくなってきているからだ。

写真1●Cisco VNI Indexによる2010年から2015年にかけた全世界のIPトラフィックの伸びの予測
写真1●Cisco VNI Indexによる2010年から2015年にかけた全世界のIPトラフィックの伸びの予測
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●シスコシステムズ合同会社の堤浩幸サービスプロバイダー事業副社長
写真2●シスコシステムズ合同会社の堤浩幸サービスプロバイダー事業副社長
[画像のクリックで拡大表示]

「NGNの先を行く」サービス統合ネットワーク

 そんなギャップを埋めるために、シスコでは新たなコンセプトとして“次世代インターネット”というキーワードを掲げる。シスコの言う次世代インターネットは、「NGNの先を行くもの」(堤副社長)。インターネットやサービスごとのネットワークを一つに統合し、収益性とサービスの多様性も兼ね備えたネットワークだという。

 サービスごとに分かれたネットワークの統合メリットは、これまでにも言われてきた。効率化やサービス内容の向上だ。それに加えて米シスコシステムズ サービスプロバイダービジネス アジア太平洋地域および日本担当のアレックス・ジニン最高技術責任者(CTO、写真3)は「トラフィックパターンの変化に対応できる」点を挙げる。

 従来は端末サイドとサービスプロバイダーとの間の垂直方向のトラフィックがほとんどだったが、「最近はデータセンター間のトラフィックなど水平方向のトラフィックも増えている」(ジニンCTO)からだ(写真4)。

 同社は、このような“次世代インターネット”を実現できる製品として、同社のエッジルーター「Cisco ASR 9000シリーズ」を挙げる。最大96テラビット/秒の大容量を実現できるほか、新たに開発したシスコ独自のネットワーク仮想化技術「Cisco nV」を用いて、複数のネットワークを統合できるという。また運用コスト面でも、業界他社のエッジ製品と比較して運用コストを最大70%削減できるとしている。

 IPトラフィック急増の打破に向けては、ライバルである米ジュニパーネットワークスも「スーパーコア」というアーキテクチャを発表しており(関連記事)、各社の競争も一段と激しくなりそうだ。

写真3●シスコシステムズのサービスプロバイダービジネス アジア太平洋地域および日本担当のアレックス・ジニン最高技術責任者(CTO)
写真3●シスコシステムズのサービスプロバイダービジネス アジア太平洋地域および日本担当のアレックス・ジニン最高技術責任者(CTO)
[画像のクリックで拡大表示]
写真4●トラフィックパターンも変化している
写真4●トラフィックパターンも変化している
[画像のクリックで拡大表示]

[発表資料(Cisco ASR 9000シリーズ)へ]
[発表資料(Cisco VNI Index)へ]