IT分野の調査会社アイ・ティ・アール(ITR)と日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)は2011年6月27日、国内企業の経営者や役職者を対象に実施した「企業IT利活用動向調査」の結果の一部を発表した。

 本調査ではまず、震災によるビジネスへの被害状況について聞いている。「影響がなかった」とした回答は全体の33.0%だった。つまり3分の2の企業は、何かしらの影響を受けたことになる。

 具体的な影響内容としては、「自社の被災はなかったが、業務の一部が停滞」が26.6%、「自社拠点の一部が被災」が26.0%、「調達先の被災により、事業が遅延」が22.8%、「納入先の被災により、売り上げを逸失」が12.8%と続く。「本社もしくは重要拠点が被災」と回答した企業は5.4%にとどまった。

 また調査では、今年度のIT予算の見直し状況について聞いた。見直しを「実施済み」とした企業は12.8%、「今後実施予定」とした企業は22.6%、「実施予定はない」は64.6%だった。

 「実施済み」あるいは「今後実施予定」とした企業に見直しの方向性について聞いたところ、「予算を縮小する」という企業が「予算を拡大する」という企業を上回った。

 まず予算の見直しを「実施済み」とした企業への回答を見ると、拡大する方向で見直すとした企業は15.7%。縮小する方向で見直すとした企業は31.3%だった。

 次に「今後実施予定」とした企業への回答を見ると、拡大する方向で見直すとした企業は11.5%。縮小する方向で見直すとした企業は34.5%だった。また、今後実施予定とした企業のうち、5.3%が「見通しが立たない」と回答した。

 さらに調査では、震災発生後、各企業でどのような施策を実施しているかを質問した。この結果、多くの企業がまずはビジネスの立て直しを重視していることが分かった。「実施済み」とした回答数について高い順に見ると、「個別の事業計画の見直し・再検討」がトップで25.6%。次いで「全社的な経営計画の見直し・再検討」が22.2%と、経営や事業そのものの内容を再検討する企業が多い。

 次に「従業員の出勤形態の見直し・変更」が18.6%、「被災/停電対応を目的とした事業拠点の見直し・変更」が17.6%と、震災の影響に直結した個別領域についての対応が続く。

 一方、「ITプロジェクトの中止」については、実施済みと回答したのが6.0%、今後実施予定としたのが10.8%。また「ITプロジェクトの一時停止」については、実施済みとしたのが9.6%、今後実施予定としたのが11.2%だった。

 中止・停止はゼロではないが、他の選択肢と比べると比較的回答数は少なかった。先に見たように企業のIT投資の動向は「弱含み」ではあるものの、ITプロジェクトを実施する意欲自体は失われていないことがうかがえる。

 この調査は、JIPDECの依頼に基づき、JIPDECとITRが2011年5月20日から25日にかけて実施した。調査対象は、国内企業の経営者や情報システムおよび経営企画部門の役職者。有効回答は500件。グラフ入りのレポート要約はITRのWebサイトで閲覧できる。