東日本大震災からの復興を目指した「ICT復興支援国際会議」が、2011年6月19日に仙台市で行われた。名称が示すように、ICTを活用した災害対応や復興事業を議論する会議である。会議の冒頭、主催者のみやぎモバイルビジネス研究会の原亮会長(写真1)は「つながりを作り、決意を固める場にしたい」と呼びかけた。

 続いて、総務省 東北総合通信局の井澤一朗局長(写真2)と国土交通省東北運輸局の清谷伸吾局長(写真3)がそれぞれあいさつ。井澤局長は「震災直後から新たなメディアが機能した。その検証を含めて、これから起こるかもしれない災害に備えたい」、清谷局長は「新たなビジネスを作ることは待ったなしだ。専門家による提言を期待したい」とした。

写真1●みやぎモバイルビジネス研究会の原亮会長
写真1●みやぎモバイルビジネス研究会の原亮会長
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写真2●総務省 東北総合通信局の井澤一朗局長
写真2●総務省 東北総合通信局の井澤一朗局長
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写真3●国土交通省東北運輸局の清谷伸吾局長
写真3●国土交通省東北運輸局の清谷伸吾局長
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写真4●アットマークベンチャー代表取締役の大津山訓男氏
写真4●アットマークベンチャー代表取締役の大津山訓男氏
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 今回の会議の発起人である、アットマークベンチャー代表取締役の大津山訓男氏(写真4)は、開催に至った背景を説明した後、「被災地では高齢者が多く、パソコンやスマートフォンを使わない人が大勢いる。紙に印刷した“かわら版”のようなものが欲しい」など、東北以外の地域から参加した人向けに、ヒアリングで得られた情報を提供した。

 午前中のパネルディスカッションは、大津山氏のコーディネートのもと、日本Androidの会の丸山不二夫会長、総務省 情報通信国際戦略局 情報通信政策課の谷脇康彦課長、日立オートモティブシステムズの篠崎雅継理事、NTTドコモ スマートコミュニケーションサービス部コンテンツ推進室 コンテンツ支援担当部長山下哲也氏がパネリストとして登場した(写真5写真6)。

写真5●アットマークベンチャー代表取締役の大津山訓男氏(左)と日本Androidの会の丸山不二夫会長(右)
写真5●アットマークベンチャー代表取締役の大津山訓男氏(左)と日本Androidの会の丸山不二夫会長(右)
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写真6●左から日立オートモティブシステムズ理事の篠崎雅継氏、総務省 情報通信国際戦略局 情報通信政策課長の谷脇康彦氏、NTTドコモ スマートコミュニケーションサービス部コンテンツ推進室 コンテンツ支援担当部長の山下哲也氏
写真6●左から日立オートモティブシステムズ理事の篠崎雅継氏、総務省 情報通信国際戦略局 情報通信政策課長の谷脇康彦氏、NTTドコモ スマートコミュニケーションサービス部コンテンツ推進室 コンテンツ支援担当部長の山下哲也氏
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情報の途絶防止にネットと開発者が貢献

 最初のポジショントークでは、丸山氏が「震災とIT」をテーマに、災害時におけるコミュニケーションと情報共有の重要性を解説した。阪神淡路大震災と比較して、震災直後にメールやTwitterによる情報共有があったおかげで、大きなパニックにならなかったのではないかと分析した。

 さらに、クラウドリソースの無償提供を背景に多くの自発的なサイトが立ち上がったことを紹介、情報の途絶を防ぐために大きな役割を果たしたという。また、首都圏では帰宅者が街に殺到して行列をなしたことから、緊急時にはネットが途絶えても人づての通信が可能になるのではないかとし、「ぜひ実現したい」と意欲をみせた。

 丸山氏は米国との違いにも触れ「日本には情報配布の壁がある」と指摘する。緊急速報や気象情報など、「誰もが使える“パブリックドメイン”になっていないのがおかしいと思う情報がたくさんある」(丸山氏)。国が持つ情報は公開し、新しいビジネスを興せばいいという持論を展開。最後は「日本はアプリ開発に有利な条件が整っている。アプリのアップロードでは世界ナンバーワンになろう」と呼びかけた。