写真●ACCJ副会頭のジム・フォスター氏(左)とACCJインターネット・エコノミー・タスクフォース委員長の杉原佳尭氏(右)
写真●ACCJ副会頭のジム・フォスター氏(左)とACCJインターネット・エコノミー・タスクフォース委員長の杉原佳尭氏(右)
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 在日米国商工会議所(ACCJ)は、東日本大震災後の経済復興と日本の経済再生に向けた提言書をまとめ、2011年6月21日に会見を行った(写真)。

 提言では、東北地域一帯を「特区」として、ICTを活用した新しい取り組みを推進することを挙げている。ACCJ副会頭のジム・フォスター氏は、「東北地区は人口が550万程度で、経済規模も日本全体からみると大きくないだけに、新しい試みが実行しやすい。東北での試みを日本全体に広げていくことで、国全体の経済再生の転機になる」と語った。

 提言書では、経済復興に向けたインフラの再構築について「被災地におけるインターネットとワイヤレスネットワークのインフラの早急な復旧と拡大」「参入者の新電波帯域の利用手続きの簡素化を含み、ブロードバンド・ワイヤレスと融合サービスの促進」「中小企業と農業者によるクラウド・コンピューティングの利用を支援する新しい制度の設立」「コスト削減とエネルギーの効率化を図るための、日本国外でのデータセンターへのアクセスの拡張」を取り上げている。さらに、ICTの活用分野の例として行政サービス、ヘルスケアと教育、エネルギー問題に言及、活動の指針を提示している。

 一連の施策を推進するため、復興再建担当CIO(最高情報責任者)が必要だという見解も提言書では示されている。フォスター氏は「責任をもってやろうという主体がないと、何も実現しない」と、政策の策定や実行が滞っている政府に対して苦言を呈した。

 提言書をとりまとめたACCJインターネット・エコノミー・タスクフォース委員長の杉原佳尭氏は、「今後は、インターネットがすべての経済活動の基盤にあるものとして、発想を転換していく必要がある」と、かねてから提唱している「インターネット・エコノミー」を実現する好機とみる。取り組むべき具体的な活動としては、光ファイバー網の整備や電子商取引、トレーサビリティ、電子行政、遠隔医療、スマートグリッドの推進などを挙げた。

 さらに杉原氏は「米国の日本への関心は非常に高い」と説明する。直前にワシントンD.C.で開催されたという協議でも、FCC(連邦通信委員会)のジュリアス・ジェネコウスキー委員長などが参加して震災復興に向けた日米協力の方策が議論されたという。「オバマ大統領は、2年間の外交を通じて対話ができる相手とできない相手を実感した。米国政府は、東アジアにおける日本との同盟関係の重要性を改めて認識している」(杉原氏)。

 また、ACCJの会員の多くが実際に被災地を訪れて復旧・復興のための活動を実践、その経験を通じて「何かのきっかけがあれば、ICTを活用した経済の再生は可能だと感じた」(杉原氏)とした。