写真●理化学研究所の野依良治理事長(左)と富士通の間塚道義会長(右)
写真●理化学研究所の野依良治理事長(左)と富士通の間塚道義会長(右)
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 理化学研究所(理研)と富士通は2011年6月20日、共同開発中のスーパーコンピュータ「京(けい)」が、世界中で稼働中のスーパーコンピュータの性能を集計しているTOP500プロジェクトで1位になったと発表した。日本のスーパーコンピュータが1位になるのは、海洋研究開発機構が運用しNECが開発した「地球シミュレータ」以来、7年ぶりとなる。

 京は今回のベンチマークで8.162ペタFLOPSを記録。2位の中国「天河1A号」は2.566ペタFLOPSで、「他の追随を許さない圧倒的な1位だった」(理研の計算科学研究機構の平尾公彦機構長)。京は12年6月末の完成に向けて現在、構築中だ。今回は完成時の80%に当たる672筐体を接続してベンチマークを実施した。完成時には10ペタFLOPSの処理性能を目指している。

 京は、行政刷新会議の事業仕分けの際に一度、事実上の事業凍結の判定が下されたことでも有名である。理研の野依良治理事長(写真左)は、「いろいろな経緯があったので今回の結果は喜ばしい。コンピュータは科学、材料、機械など科学技術力の結集。今回の結果は、我が国が総力を挙げた結果だ。競争相手が一番を目指す中で、やはり一番を目指さなければいけないと考えている」と話した。開発を担当した富士通の間塚道義会長(写真右)は「京に部品を供給している協力会社が東日本大震災で被災し、プロジェクトが止まったこともあった。さまざまな関係者の協力で世界トップレベルのものづくりを実現した」と強調した。

 京は富士通が開発した汎用CPU「SPARC64 VIIIfx」を搭載し、超並列処理を実現するスカラー型のスーパーコンピュータだ。SPARC64 VIIIfxは1CPU当たりの処理性能が128ギガFLOPS、消費電力1W当たりの処理能力が2.2ギガFLOPSである。「低消費電力でも世界トップクラス」(富士通の井上愛一郎常務理事)という。理研の計算科学研究機構(神戸市)に対する京の納入を10年9月から開始したしており、富士通は京の開発に1000人規模の部隊を投入している。

 京は12年11月からは共用を始める。気象予測や新素材開発といった科学技術演算の用途に広く貸し出す予定だ。富士通の井上常務理事は「スカラー型はベクトル型向けのアプリケーションに弱いと言われているが、コンパイラの性能向上などにより、広い用途に利用できるコンピュータになっている」と説明する。

 TOP500プロジェクトは毎年6月と11月にスーパーコンピュータの処理性能の順位を発表している。「LINPACK」と呼ぶ連立一次方程式の主に浮動小数点演算を解くベンチマーク性能で順位を決定する。今回の発表では京が1位になったほか、日本勢では東京工業大学の「TSUBAME2.0」が1.192テラFLOPSで5位に入った。TSUBAME2.0の構築はNECと米ヒューレット・パッカードが担当している。