富士フイルムは2011年6月16日、iPhoneなどスマートフォンを使い脳卒中患者の救急医療を支援する新システムを発売したと発表した。東京慈恵会医科大学との共同研究を経て実用化した。スマートフォンで病院外にいる脳外科専門医と脳卒中患者の検査画像や診療情報を共有でき、患者が搬送された病院の医師とやり取りしながら適切な処置を指示できる。国内には脳卒中の処置が可能な医療機関が約3200カ所あるが、今後5年間でその2~3割への導入を目指す。

 発売したのは遠隔画像診断治療補助システム「i-Stroke(アイストローク)」。脳卒中の発症初期段階で専門医と現場の医師が遠隔で検査画像などをやり取りし適切な早期治療につなげる。病院内のサーバーと専用ソフトをインストールしたスマートフォンを連携させて実現する。

 同システムは登録済みの専門医のスマートフォンに一斉連絡する機能や、患者の検査画像や専門医が記入したコメントを時系列で表示する機能などを搭載。3Dで検査画像を表示する機能や、手術中の映像をリアルタイムで閲覧できる機能をオプションで追加できる。「脳神経の専門医が自宅にいても海外出張中でも、病院での処置を指示し、手術の状況を把握できる」(東京慈恵会医科大学の村山雄一教授)。

 当初はiPhoneのみへの対応となるが、2011年秋ごろをメドにAndroid端末にも対応する予定。iPhone用のソフトはApp Storeから無償でダウンロード可能。病院内に設置する専用サーバーの導入費用は1000万~5000万円程度かかる。

 富士フイルムは今後、心疾患など脳卒中以外の救急医療でも利用できるように同システムを応用したり、海外でもi-Strokeを販売したりする計画だ。都内で会見した富士フイルムの玉井光一取締役執行役員は「時と場所を選ばずにチーム医療を実現する画期的なシステム」と、今後の拡販への意気込みを示した。