写真●記者会見で説明するソフトバンクモバイル 常務執行役員 渉外本部 本部長の弓削哲也氏
写真●記者会見で説明するソフトバンクモバイル 常務執行役員 渉外本部 本部長の弓削哲也氏
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 ソフトバンクモバイル(SBM)は2011年6月9日に記者会見を行い、総務省 電気通信事業紛争処理委員会に対して携帯接続料の算定根拠を開示する方針を示した(写真)。これはNTTドコモがSBMに対して2010年度携帯接続料を算定した際に使った項目や金額などの情報を開示することを求めて、2011年5月18日に紛争処理委員会にあっせんを申請していたことを受けての動きである(関連記事)。

 ただし「開示先は第三者機関として携帯接続料の妥当性を検証してもらう紛争処理委員会のみ。ライバル企業であるNTTドコモへは開示しない」(SBM 常務執行役員 渉外本部 本部長 弓削哲也氏)とした。開示内容は、総務省の「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」で規定した「別表第2様式」と呼ぶフォーマットにのっとる。

2009年度以前の営業費用算入分を返せ

 その一方で、SBMはNTTドコモへの反撃とも取れる手立てを取った。NTTドコモに対して、2009年度以前に支払った携帯接続料の一部返還を求めるあっせんを紛争処理委員会に申請した。SBMの主張は「電気通信事業法上で接続料は適正な原価に適正な利潤を加えたものと規定されており、営業コストは接続料原価の対象外になる。しかしNTTドコモは2009年度以前の携帯接続料において、販売奨励金などの営業コストを算入していた。その算入分をさかのぼって返還すべき」(弓削氏)というものである。返還を求める金額は守秘義務に関わる部分として非公表とした。

 SBMは営業コストを携帯接続料算定に加えてはいないものの、2009年度まで「ネットワーク外部性追加料金」という名目の加入者獲得費用を加えていた。「他社がこのネットワーク外部性追加料金をさかのぼって除外せよと主張すれば、水掛け論にならないか」という質問に対しては、「ネットワーク外部性追加料金は電気通信事業法の適正利潤に該当すると解釈しており、営業コストとは異なり算入する根拠がある。水掛け論になることも考えられるが、根拠も違うし、算入している比率も格段に違う」(弓削氏)と回答した。

 NTTドコモが2011年5月18日の記者会見で示したSBMの携帯接続料試算に対しては、その内容が不確かであるとして、否定的な見方を示した。例えばNTTドコモが試算した2009年度のSBMの発着を合わせた総通話時間3.8兆秒は、「公開情報からは算出できない。さらに過大な推計値であり、基地局や交換機といった通信設備の利用回数を考慮していない」(弓削氏)とした。

 さらにSBMは、「シェアの高い携帯電話事業者は自社同士の通話比率が増え、自社の通信設備の利用回数が増える。その分携帯接続料は安くなるが、シェアの低い携帯電話事業者は逆に高くなる」(弓削氏)という解釈を示した。ただし、SBMはホワイトプランという一定時間、SBM加入者同士の通話を無料にする施策を取っており、自社同士の通話比率は高いのではという指摘がある。これに対して弓削氏は、「ホワイトプランによって自社同士の通話比率は上がるものの、大幅に変わるものではない」と否定した。