米eBay傘下のPayPalは、米Googleおよび現在Googleに勤務している元PayPal幹部2人を相手取り訴訟を起こした。米国時間2011年5月26日に訴状を提出しており、PayPalの企業秘密を盗用されたと主張している。この日は、GoogleがAndroid端末向けのモバイル決済アプリケーション「Google Wallet」を発表している(関連記事:Google、Android向け決済アプリ「Google Wallet」を今夏開始)。

 PayPalが訴えた元幹部は、Osama Bedier氏とStephanie Tilenius氏。訴状(PDF文書)によると、先にGoogleに入社していたTilenius氏がBedier氏を誘い、Bedier氏はGoogle入社後PayPalの企業秘密を不正利用して、モバイル決済、POS(販売時点情報管理)、デジタル財布機能に関する情報をGoogleと共有したという。

 Bedier氏は2002年12月~2011年1月24日にPayPalに勤務し、その後Googleに移った。退社時の肩書きは、Platform, Mobile, and New Ventures担当バイスプレジデントで、Googleでは同様の役職に就いている。2008年から2011年に、GoogleとPayPalはGoogleのモバイルアプリケーション配信/販売サービス「Android Market」向けの決済手段に関して交渉を行ったが、その際のPayPal側担当責任者がBedier氏だった。この交渉期間中に、Bedier氏はGoogleの面接を受けていた。結果的に両社の交渉はまとまらなかった。

 Tilenius氏は2001年にeBayに入社し、2004~2008年にPayPalのMerchant Services担当バイスプレジデントを務めたのち、2009年10月16までeBay北米およびグローバル製品担当バイスプレジデントを務めた。2009年10月16から2010年3月3日までeBayとコンサルティング契約を結んでいたが、2010年2月16日にGoogleに雇用された。

 PayPalは、企業秘密盗用に加え、両氏が契約義務に違反したと主張している。PayPalグローバルコミュニケーション担当上級ディレクターのAmanda Pires氏は、「優れた決済手段を顧客に提供することで競い、技術革新することが本当の勝利だが、ときに人々や競合社の行為によっては法的措置しか有意義な手段が残されていないこともある」と公式ブログで述べている。

 また米メディアの報道(Businessweek)によると、Google広報担当者は、「シリコンバレーは、個人が自身の知識と経験を使って、より良い雇用条件を求める能力の上に成り立っている。Googleは企業秘密を尊重しており、今回の訴訟に対して自社を弁護する」と電子メールで回答している。

[発表資料(公式ブログ)]