写真●日本OSS推進フォーラム 第8回 幹事団・顧問団会合
写真●日本OSS推進フォーラム 第8回 幹事団・顧問団会合
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図●日本OSS推進フォーラム 2011年度 組織体制
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 日本OSS推進フォーラムは2011年5月27日、第8回 幹事団・顧問団会合を経済産業省で開催し、2011年度の活動方針を採択した。クラウドコンピューティングへの取り組みを強化するため3部会を新設し、既存の部会と合わせて7部会体制とする。

 日本OSS推進フォーラムは日本の大手コンピュータメーカーや大手システムインテグレータなどによるオープンソースソフトウエア(OSS)推進団体。経済産業省、総務省がオブザーバーとして参加しており、日本、中国、韓国の3国による会議「北東アジアOSS推進フォーラム」の開催などを行っている。

 代表幹事の富士通 執行役員副社長 佐相秀幸氏は「震災時の情報共有にITが大きな役割を果たした。我々の仲間である多くのOSS技術者が参加したsinsai.info(関連記事)などは、OSSを使って迅速にサイトを立ち上げ、オープンな情報収集を実現、OSSの可能性を見せてくれた。震災からの復興に、OSSの透明性、迅速性、経済性などを活用すべき」と挨拶。

 経済産業省 商務情報政策局長 石黒憲彦氏は「今回の震災ではITの世界でボランティアが活躍した。官、民に次ぐ第3の公共空間がITにはある。この中(日本OSS推進フォーラム)にもボランティアで参加された方が多数おられる。貢献に感謝したい」と語った。例えば日本OSS推進フォーラム 人材育成部会 主査の三浦広志氏は、sinsai.infoの副代表を務めている。

クラウド基盤の検証やRubyアプリのOSS公開

 続いて2010年度に活動した部会が報告を行った。クラウド部会は技術タスクフォース(TF)でHadoopなどの検証を実施。クラウドファクトリー構想TFでは、社会基盤となるサービスを提供するソーシャルクラウド(関連記事)の検討などを行った。メッセージDB TFは、同TFが整備してきたLinuxカーネルのエラーメッセージデータベースであるmPediaのコミュニティ形成に取り組んだ。

 クライアント部会はOSSクライアントの普及活動として、資料「OpenOffice.org活用事例集」や、「共同利用で出た課題のリストと対応状況」、「OpenOffice.orgとLibreOfficeの比較情報」を作成。また法人向けクライアントPC情報サイトを公開した。

 アプリケーション部会は、Ruby製プロジェクト管理ツール「OpenPJC」と開発支援ツール「Traxi」および「Customize Tool for Open PJC(CTOP)」をOSSとして公開(関連記事)。また「Ruby & Ruby on Rails の適用事例集」を作成した。

 組込みシステム部会は組み込み分野におけるOSS開発促進の提言を発表。オープンイノベーションにおけるトップイノベータの育成、連携強化の重要性を説いている。

 人材育成部会はOSS貢献者賞(関連記事)選定、表彰を実施。OSSの学習に必要な項目を体系化したOSSコースナビの普及促進、品質向上に取り組んだ。

2011年度はソーシャルクラウドなどに取り組む

 2011年度は「北東アジアOSS推進フォーラム」や「日本OSS貢献者賞・奨励賞」とともに、各部会で以下のような活動を実施する方針だ。

 クラウド戦略検討部会は、ソーシャルクラウドの基盤であるクラウドファクトリ構想の具体化や、政策提言策定の取りまとめなどを行なう。

 ソーシャルクラウド検討部会はソーシャルクラウド領域の実証実験に向けたシナリオの検討とニーズの策定などを実施する。

 クラウド技術部会はソーシャルクラウド実現にともなう技術課題の抽出、必要となるOSSスタックの調査、標準化・認定制度の検討を行う。

 クラウドセキュリティ部会はセキュリティやログ管理、クラウド間のデータ可搬性,関連法制度の検討を実施する。

 組込みシステム部会は、開発の現場とコミュニティとの連携推進に加え、組み込み分野におけるOSS開発促進のためのカンファレンスを開催する。

 クライアント部会は、OSSのオフィスソフトを収録したCDの無償配布と、利用方法についてのサポートによる震災支援活動を計画している。

 アプリケーション部会はRuby on Railsベースのアプリケーション事例収集拡大や、OSS評価データベースの一般公開に取り組む。