写真1●NTTドコモの「環境センサーネットワーク」向け観測機器の展示
写真1●NTTドコモの「環境センサーネットワーク」向け観測機器の展示
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写真2●観測データを集めてサーバーに送信する多重・通信装置 左上にある基板にFOMAモジュールが載っている
写真2●観測データを集めてサーバーに送信する多重・通信装置 左上にある基板にFOMAモジュールが載っている
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写真3●1.5GHz帯から2.5GHz帯までの六つの周波数帯(バンド)に対応した小型のマルチバンド電力増幅器「PANTHER」
写真3●1.5GHz帯から2.5GHz帯までの六つの周波数帯(バンド)に対応した小型のマルチバンド電力増幅器「PANTHER」
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写真4●PANTHERを使った増幅デモの様子 中央の基板上に0.7GHz帯から2.5GHz帯の9バンドすべてに対応したバージョンのPANTHERチップが載っており、手前のコントローラでバンドを切り替えて増幅の様子を確認できる。
写真4●PANTHERを使った増幅デモの様子 中央の基板上に0.7GHz帯から2.5GHz帯の9バンドすべてに対応したバージョンのPANTHERチップが載っており、手前のコントローラでバンドを切り替えて増幅の様子を確認できる。
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 2011年5月25日から27日まで、無線およびモバイル通信関連の展示会「ワイヤレスジャパン2011」が東京ビッグサイトで開催された。NTTドコモのブースでは、全国にきめ細かく配置した観測局を用いて花粉や気象、落雷などの情報をネットワーク配信する「環境センサーネットワーク」サービス向けの観測機器や、携帯電話端末を世界各国の周波数帯で利用可能にするための小型電力増幅器といった、普段ほとんど目にする機会がない珍しい機器やデバイスを参考展示していた。

 環境センサーネットワーク向けの機器の展示では、花粉センサーや風向・風速センサー、気温・湿度センサーなどの実物を展示(写真1)。これらの機器をビルの屋上などに設置してデータを集め、FOMAモジュールを搭載した「多重・通信装置」(写真2)経由で同社のサーバーに送信、データを蓄積しているのだという。

 収集したデータは、気象情報の配信サービスを手がける会社や花粉情報を必要とする製薬会社などに配信する。展示会場では、既に観測および配信を始めている花粉情報や気象情報に加え、2011年夏からは紫外線情報の全国観測がスタートすることなどをアナウンスしていた。観測局の数も現状の全国2500局から、将来的には9000局まで増やす予定となっている。

 その隣では、携帯電話サービスで利用する1.5GHz帯から2.5GHz帯までに含まれる六つの周波数帯(バンド)に対応した小型のマルチバンド電力増幅器「PANTHER」(Power Amplifier for Network-oriented Transaction tHrough Excellent Reconfigurability)の試作チップなどを展示していた(写真3)。同チップはNTTドコモが半導体メーカーのルネサス エレクトロニクスの協力のもと開発したものだという。

 携帯電話端末の内部では、使用するバンドごとに電力増幅器が必要となる。1チップで1バンドのみをサポートする現用の「シングルバンド増幅器」を使う場合、3mm×3mmといったサイズのチップを、利用するバンド数分だけ用意する必要がある。このため、世界の携帯電話サービス(GSM/W-CDMA/LTE)で利用する0.7GHz帯から2.5GHz帯までの9バンド(A~I)をフルサポートした端末をシングルバンド増幅器で作ろうとすると、端末サイズが巨大になってしまう可能性があるわけだ。

 PANTHERは、チップ内部でスイッチのON/OFF状態を切り替えることで特定のバンドのみの信号を選択的に増幅できる仕組みになっている(写真4)。写真3の最も小さい最新PANTHERチップの場合、1チップでD~Iまでの6バンドをサポートしていながらサイズは8.05mm×6.2mmにとどまっており、シングルバンド増幅器を六つ使うのと比べて実装面積などを圧倒的に小さくできる。

 NTTドコモによれば、あくまでも試作機の参考展示ということで、これがそのまま携帯電話端末に載るといった話ではないという。しかし、こうしたマルチバンド対応技術の開発が今後登場するグローバル対応端末の小型化に貢献することは間違いなく、同技術の急速な進歩を見る限り、「1台で世界中どこでも利用可能」という端末が登場する日もそう遠くはなさそうだ。