総務省は2011年5月24日、「ブロードバンド普及促進のための競争政策委員会」の第1回会合を開催した(こちらに関連記事)。委員会の検討事項の中で注目すべきは、検討事項の一つである「モバイル市場の競争促進」の中にある現在端末シェアが25%以上の携帯電話事業者に課せられている規制「二種指定制度(第二種指定電気通信設備制度)」のあり方についてである。この二種指定制度は、NTTドコモがソフトバンクモバイル(SBM)に対して150億円の超過支払いとなっている携帯接続料の問題と直結しており、委員会での議論の結果が多額である携帯接続料の取り扱いに大きな影響を与えるためである。NTTドコモとSBMの代表者が直接意見を述べる2011年6月14日の次回会合は、互いの主張が激しくぶつかりあうことが予想される。

 NTTドコモはSBMの接続料問題を、あっせん申請という形で総務省 電気通信事業紛争処理委員会へも持ち込んでいる(関連記事)。同社が2011年5月18日に開催した会見では、現行制度内での解決を紛争処理委員会という場で目指しながらも、SBMが規制対象外のために携帯接続料の算定根拠を示す必要がないという二種指定制度そのものの見直しを求めて、委員会の場でも意見を述べていく考えを示していた。

 委員会に先立って実施した意見募集でもNTTドコモとSBMの意見は真っ向から対立している。例えばNTTドコモは「二種指定制度による接続料算定ルールは全事業者同等に適用すべき」と述べているのに対し、SBMは「ガイドラインなどによる全事業者への同一ルールの適用で競争ルールが有効に機能していない。50%近くの市場シェアを持つ事業者が優位性を保持し、市場の膠着を助長している」とした。さらにSBMは「市場シェア40~50%の事業者に規制を強化すべき」として、NTT東西に対するのと同様に、NTTドコモに対しても委託先子会社や関連会社、代理店などに監督義務を課すべきとしている。

<MNOによるローミングの話題再び>
 もう一つNTTドコモとSBMで意見が割れそうな事項が、「線路敷設基盤の開放による設備競争の促進」の中で出てくる「基地局や基地局を設置する鉄塔の事業者間での共用」である。委員会に先立って実施した意見募集でSBMは、「ローミングを含むネットワークシェアリングはルールがない。早急に実現に向けた議論をすべき」といった意見を述べている。

 2009年3月に開催した「電気通信事業政策部会・接続政策委員会 合同公開ヒアリング」の場でも、こうしたMNOによるローミングが議題に上がった。その場でNTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏は「周波数の割り当てを受けた事業者は自ら基地局などの設備投資をするのが原則である。仮にローミングする場合も,新規参入事業者が一定エリアを構築するまでの時限的措置として行うべきだ」と述べていることから、NTTドコモはこの意見に反対するとみられる。

 一般的なローミングに加えて、SBMは災害時のローミングについても意見を述べている。「災害で基地局などのネットワークが被災した場合、ローミングによる対処が人道的見地から必要。緊急通報だけでなく、一般通話も対象にルール整備すべき」という意見である。これについて委員会の構成員からは、「安心・安全といった観点からローミングについても考えるべき」「設備競争の枠と、セーフティネットの兼ね合いを議論しなくてはいけない」という意見があり、こちらも議論の対象となる見込みである。