総務省は2011年5月24日、ブロードバンド普及促進のための競争政策委員会の第1回会合を開催した。この委員会は、2010年12月に総務省の政務三役が打ち出した「光の道」構想の基本方針・工程表を受けて(関連記事)、総務大臣が2011年3月1日に情報通信審議会に諮問し、発足したもの。主査には、ICTタスクフォースの電気通信市場の環境変化への対応検討部会の座長を務めた山内弘隆一橋大学大学院教授が就いた。

 委員会は「光の道」実現に向けて競争を促進するために、主に、(1)線路敷設基盤の開放などによる設備競争の促進、(2)NGNのオープン化によるサービス競争の促進、(3)モバイル市場の競争促進、(4)今後の市場環境の変化などを踏まえた公正競争環境の検証・担保の在り方---などを検討する。年内をめどに答申する予定となっている。

 第1回の会合となった今回は、委員会の発足と共に3月3日から4月22日の期間に募集していたパブリックコメントの結果と、委員による自由討議が行われた。パブリックコメントには、マンションなどの屋内配線の開放、災害時の携帯電話のローミングの必要性、加入電話網(PSTN)と同じようなNGN(次世代ネットワーク)のアンバンドル化、モバイルの二種指定制度の問題など、事業者の立場によって異なる多岐にわたる意見が寄せられた。

 委員による意見交換を経て、山内主査は「モバイル分野では、二種指定制度、禁止行為規制、MVNO(仮想移動体通信事業者)への相互接続義務の問題、さらに周波数オークションと規制との関連。固定分野ではNGNのオープン化がポイントになるのではないか。震災を受けた危機対応も重要な論点になり、全体の競争環境の中で位置付けていきたい」と説明。主に上記が検討項目となっていく見通しを示した。

携帯事業者の二種指定制度に見直し必要の声相次ぐ

 モバイルの二種指定制度の問題とは、モバイル分野ではNTTドコモとKDDI、ソフトバンクモバイルが3強とも言える状況になっているのに対し、規制がそれぞれ別々となっていることを指す。

 第二種指定電気通信設備制度は端末シェア25%以上の事業者を指定事業者として定めており、NTTドコモとKDDIが該当する。これに対して、ソフトバンクモバイルは指定外だ。

 さらにNTTドコモは、収益ベースのシェアが25%を超える場合に指定される行為規制の対象でもある。5月18日にNTTドコモは、ソフトバンクモバイルに対して、接続料水準に関連して電気通信事業紛争処理委員会へあっせん申請を行ったが(関連記事)、その背景にはこのような二種指定制度の問題が横たわっている。

 今回委員の間からも「二種指定制度を作ったときとは状況が変わってきている。きちんと議論すべき」という声が相次いだ。「光の道」構想では固定寄りの議論が多かったため、相対的に委員会ではモバイル分野での競争環境の見直しに大きなメスが入りそうだ。

 NGNのオープン化については、NGNの接続ルールを定めた2008年以来の見直しとなる(関連記事)。事務局からは、「もともと3年後に見直すことになっていた。PSTNがいずれ無くなることになり、受け皿となるNGNの競争環境を考え直してみる必要がある。光ファイバーと一体となっているNGNは、競争事業者が使いづらいと言う意見もある」という位置付けが示された。

 パブリックコメントには、PSTNで実現していた電話会社選択サービス「マイライン」のようなサービスのNGNでの実現、ラインシェアリングのような接続形態、PSTNからNGNへの移行を促進するような競争の枠組み、などが寄せられており、これらが検討の対象になりそうだ。

 委員会では、各事業者の意見を聴取するために6月14日と21日に、電気通信事業政策部会と合同でヒアリングを実施する。6月14日は主にモバイル系の団体が対象。NTTドコモ、ソフトバンク、イー・アクセス、日本通信、ミクシィ、融合研究所が参加する。一方、6月21日は主に固定系事業者が対象で、NTT東西、KDDI、ケイ・オプティコム、ジュピターテレコム、テレコムサービス協会が参加する予定となっている。

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