写真1●提携を発表し握手するトヨタ自動車の豊田章男社長(左)と米セールスフォースのマーク・ベニオフCEO(右)
写真1●提携を発表し握手するトヨタ自動車の豊田章男社長(左)と米セールスフォースのマーク・ベニオフCEO(右)
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●提携の意義を説明する豊田社長
写真2●提携の意義を説明する豊田社長
[画像のクリックで拡大表示]
写真3●セールスフォースのベニオフCEO
写真3●セールスフォースのベニオフCEO
[画像のクリックで拡大表示]

 トヨタ自動車は2011年5月23日、自動車向けのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)開発に向けて米セールスフォース・ドットコムと提携した(写真1)。開発する新サービスの名称は「トヨタフレンド」で、セールスフォースの企業向けSNSである「Chatter」を使う。トヨタは2012年に市販する予定の電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド自動車(PHV)で、新サービスを開始する。

 「未来のモビリティ社会では、走る、曲がる、止まるというクルマの基本的な価値に、もう一つ『つながる』という価値が重要になると考えている。人とメーカー、販売会社、そしてクルマがつながることで、クルマが新しいコミュニケーション空間となれる」。トヨタ自動車の豊田章男社長は、提携の意義をこう述べた(写真2)。一方のセールスフォースのマーク・ベニオフCEO(最高経営責任者)は、「ソーシャルによって、クルマ自体が大きく変革する。クルマ業界を先導するトヨタと共同で、顧客に新しい価値を提供できることをうれしく思う」と述べた(写真3)。

 トヨタが開発する新サービス「トヨタフレンド」は、利用者が自動車を日常生活で使ったり楽しんだりするための情報を提供するサービス。EVやPHVの電池残量を自動車が「つぶやく」、定期点検のお知らせをEVがつぶやいて利用者が返信すると、販売店宛てに点検の予約ができる、などだ。友人同士が自動車の位置情報を車載端末でやり取りして、ドライブを楽しむという「フレンドサーチ」と呼ぶ機能も提供する。

 トヨタ自動車は4月に、米マイクロソフトとの間でもテレマティクス分野における提携を発表済みだ(関連記事)。マイクロソフトのクラウド基盤サービス「Windows Azure」を使い、次世代の車載情報通信サービスなどを開発する。

 トヨタは今年3月に発表した「トヨタ グローバルビジョン」で、グローバルIT企業との連携を新規事業戦略の一環として挙げている。豊田社長は、「両社との提携はトヨタ グローバルビジョンの一環」と説明。両社のクラウドサービスを組み合わせることで、より付加価値の高いサービスを開発できるとの認識を示した。

 両社のクラウドサービスの技術的な位置付けについては、「当社のテレマティクスサービスと自動車をつなぐ処理基盤にはWindows Azureを、利用者の接点になる部分にはiPadやiPhoneなど多様なデバイスへのサービスを開発しやすいセールスフォースのChatterを使う。両者は分離しているのではなく、密接につながっている」(トヨタの友山茂樹 常務役員)。

 新サービスの開発に向けてトヨタとセールスフォースは、トヨタの顧客向けIT事業会社であるトヨタメディアサービスが実施する第三者割当増資に応じる。マイクロソフトも含めた3社の出資金額は、トヨタが4億4200万円、マイクロソフトが3億3500万円、セールスフォースが2億2300万円となる予定。