国内の主な公衆無線LANサービス
国内の主な公衆無線LANサービス
[画像のクリックで拡大表示]
NTT東日本では2011年度に無線LAN関連のサービス充実に努めるとしている(同社の決算説明資料から抜粋)
NTT東日本では2011年度に無線LAN関連のサービス充実に努めるとしている(同社の決算説明資料から抜粋)
[画像のクリックで拡大表示]

 NTT東日本は2011年5月13日、公衆無線LANサービス「フレッツ・スポット」を拡充する方針を発表した。コンビニエンスストアの建物にアンテナを設置するなどして、アクセスポイント数を現行の約5000局から10倍の約5万局と、国内の商用の公衆無線LANサービスで最多の規模に増やす。増設分については、既存のアクセスポイントがユーザー認証で用いているPPPoE方式を採用せず、普及が進んでいるスマートフォンやタブレット端末でも直接接続できるようにする。同日開催された決算会見で明らかにした。

 現行のフレッツ・スポットは、駅や空港、喫茶店などを中心に2011年3月末時点で約5000局のアクセスポイントを持つ。今後は、コンビニエンスストアや飲食店をチェーン展開する流通業者との提携によりアクセスポイントを集中展開し、2013年3月末までの2年間に約5万局まで増設する。「単にインターネットにつながるアクセスポイントを作るだけでなく、設置先の事業者の電子クーポンやキャンペーン情報を提供するアプリケーションと組み合わせる」(NTT東日本 代表取締役社長の江部努氏)としており、公衆無線LANサービスに加えコンテンツ配信システムを提供することで設置店側にもメリットが出る形とし、流通系フランチャイズチェーンとの大口契約を獲得していく方針。アクセスポイント増設に先駆け、「2011年6月からユーザーのニーズ調査を実施する予定」(NTT東日本広報室)としており、設置場所や認証方式、コンテンツ配信などについて詳細を詰めた上で実際の増設作業を進めていく。

 国内の商用の公衆無線LANサービスでは、ケイ・オプティコムの「eoモバイル Wi-Fiスポット」が近畿地方でアクセスポイントの増設を進めており、2011年4月30日にアクセスポイントを1万局とした。さらに数年後を目標として3万局まで拡充する方針を打ち出している。また、ソフトバンクモバイルは自社の携帯電話契約者を対象に「ソフトバンクWi-Fiスポット」を提供しており、2011年3月末のアクセスポイント数は2万3900局(BBモバイルポイント、FON を含む)で、国内の商用の公衆無線LANサービスとして最多であるが、ソフトバンクの携帯電話やスマートフォンなどの端末以外からは接続できない。NTT東日本の拡充計画はこれらを上回る規模である。

 これまでNTTグループの公衆無線LANのアクセスポイントの大半は、NTTブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)が設置・運営を担い、NTTBPからNTT東西やNTTコミュニケーションズ、NTTドコモなどの各社に設備を提供する形を採っている。しかし、今回の増設分のアクセスポイントは「フレッツ光網にぶら下げる形で自社で設置する」(NTT東日本広報室)としており、NTT東日本以外のグループ各社とのアクセスポイント共通運用も行わない予定。

 また、現行のフレッツ・スポットは、ユーザー認証にPPPoEを採用している。これについて江部社長は「PPPoEでは問題があるので改める」とコメントした。フレッツ・スポットのPPPoE認証は、フレッツ光やフレッツ・ADSLとの互換性を確保する目的で採用されているが、スマートフォンや携帯型ゲーム機の大部分はPPPoE認証に非対応であり、利用拡大の妨げとなっていた。新たなユーザー認証方式については未定としているが、一般的な公衆無線LANサービスで採用しているID/パスワード認証のほか、接続とログインを自動化するスマートフォン向けアプリなども視野に入れているとみられ、急速に普及が進むスマートフォンのユーザーを取り込む。既存のアクセスポイントは、「当面はPPPoEのまま運用するが、ユーザーの利便性を考え中長期的には何らかの対応を検討する」(NTT東日本広報室)としている。

「光ポータブル」2号機は7~9月発売、クレードル単体でも無線LAN親機として使用可能

 同社はこのほか、モバイルルーター「光ポータブル」の新モデルを2011年7~9月に発売する方針を明らかにした。設置台「クレードル」に無線LANの親機の機能を追加し、光ポータブル本体を外出先などに持ち出しているときでも自宅で無線LANを使用できる。現行の光ポータブルでは、クレードル単体での通信機能はなく、光ポータブル本体を持ち出していると自宅の無線LAN環境が使用できなくなるという問題があった。このほか新モデルではIEEE 802.11nに対応し、無線通信速度を高める。移動体通信網への対応は現行モデルと同様3G網となる予定。