東京ビッグサイトで2011年5月11日から13日まで開催されたIT関連の統合イベント「Japan IT Week 2011春」。東展示場では、全ホール(6ホール)を使って合計10種類の展示会が同時開催されていて大賑わいだったが、会場内でひときわ目を引いたのがコンテナ型データセンターユニットの実物展示だった。

 コンテナ型データセンターとは、読んで字のごとく、本来貨物などを輸送するために使うコンテナ(注:貨物用をそのまま使うわけではない)に、サーバーラックや電源、空調設備などを据え付けて、ユニット単位で簡単に設置や移設、増設が可能なデータセンターとして利用するというもの。モジュール型データセンターと呼ぶケースもある。

 展示会場では、インターネットイニシアティブ(IIJ)と日本SGI、NTTファシリティーズの3社がコンテナ型データセンターの実物をそれぞれのブースに持ち込んで展示していた。例えばIIJは、同社が独自開発した「IZmo」(イズモ)と呼ぶコンテナユニットをブース内に設置し、来場者に内部を公開していた(写真1)。

写真1●IIJが展示していたコンテナユニット「IZmo」(イズモ)
写真1●IIJが展示していたコンテナユニット「IZmo」(イズモ)
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 同社は4月26日、島根県松江市に同コンテナユニットを使ったデータセンター「松江データセンターパーク」を新設したことを発表しているが(関連記事:IIJが松江市に外気冷却コンテナ型データセンター開設、プライベートHaaSも開始)、会場に展示していたコンテナユニットも、展示会終了後に松江市に運んで2ユニット目のデータセンターとして実際に利用するのだという。

 日本SGIが展示していたのは、「ICE Cube Air」と呼ぶモジュール型データセンターユニットだ(写真2)。同ユニットは、外気の出入り口がある前後2枚の外壁部分が「ルーバー」(羽板)と呼ぶ細長い板を並べた構造になっており、外気冷却時には温度などの条件に応じてコンピュータがルーバーを自動開閉、スリットの間隔を調整するなどの特徴を備えている。

写真2●日本SGIが展示していたモジュール型データセンター「ICE Cube Air」
写真2●日本SGIが展示していたモジュール型データセンター「ICE Cube Air」
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 取り入れた外気を冷やす際に、同社が特許を持っている独自の気化熱冷却フィルター(写真3)を利用して温度を下げる仕組みを採用している点もユニーク。同フィルターの隙間に上部から水を垂らすと、下に落ちていく間に水が蒸発して気化熱を奪い、ルーバー経由で入ってくる外気温を下げられるのだという。

写真3●同社独自の気化熱冷却フィルターを使って取り入れる外気温度を下げる工夫をしている
写真3●同社独自の気化熱冷却フィルターを使って取り入れる外気温度を下げる工夫をしている
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 コンテナ内で水を蒸発させるのは湿度管理の面で問題があるのではないかと尋ねたところ、「全く問題ないように、まさにそこを工夫している」(日本SGI)という答えが返ってきた。

 NTTファシリティーズが展示していたのは、同社が「セルモジュール型データセンター」と呼ぶコンテナユニット(写真4)。写真を見るとかなり幅が小さいように見えるが、これはユニットの幅を本来の9mあるいは11mから、5mに短縮した展示用のコンパクト版ユニットを設置していたためだ。

写真4●NTTファシリティーズの「セルモジュール型データセンター」
写真4●NTTファシリティーズの「セルモジュール型データセンター」
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 実物の展示ではないが、会場内ではほかにNEC(NECフィールディング)がモジュラー型データセンターの模型(写真5)を展示していた。各ベンダーの力の入れ方や来場者の関心の高さを見る限り、2011年が国内におけるコンテナ型データセンターの普及元年になるのではないかという印象を筆者は持った。

写真5●NECフィールディングの「モジュラーデータセンター」(模型)
写真5●NECフィールディングの「モジュラーデータセンター」(模型)
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