東京ビッグサイトで2011年5月11日から13日まで開催されている組込み機器開発者向けの展示会「第14回組込みシステム開発技術展(ESEC)」において、ユビキタスはネットワーク経由でモニタリングや制御が可能な節電対策向けの電源タップ(写真1)や、高速ブート技術を使って一瞬で起動するLinux機などを展示している。
節電対策向けの電源タップ「iRemoTap」は、消費電力を測定するためのモジュールや無線LAN通信モジュールなどを組み込んだデバイス。測定した消費電力データは無線LAN経由で同社のサーバーに送信され、ユーザーはWebブラウザーを使ってサーバーにアクセスすることで、どこからでも機器ごとの消費電力データを確認したり、タップに接続している機器の電源をリモートから個別にON/OFFしたりできる。
同様な電源タップは他にもいくつかのベンダーから出てきているが、iRemoTapは無線LAN機器の接続およびセキュリティ設定を簡単に実行するための仕組みであるWPS(Wi-Fi Protected Setup)に対応している点が目新しい(写真2)。無線LANルーターなどと同タップのWPSボタンをそれぞれ押すことで、パソコンを使わずにすぐに無線LANに参加させられる。
同社の展示ブースでは、独自に開発した組み込み機器向けのOS高速起動技術「Ubiquitous QuickBoot」を使ったLinux機の超高速ブートもデモしている(写真3)。デモ機では、Linux上で動作するAdobe Flash Liteを使って作ったGUIアプリが一瞬(1秒あまり)で起動するようになっていた。
同技術では、実際にその一瞬でOSが完全に起動完了するわけではなく、画面表示や操作に必要な部分から先にメモリー内容を読み出しつつ、並行してほかのブートプロセスをバックグラウンドで進めるというところがミソになっている。そこで、デモでは液晶画面とは別に、Linux機(組み込み向けボート)のマザーボード側にLEDを配置して、メモリーカードからバックグラウンドでデータを読み出している様子が分かるように工夫していた。
そのほか同社のブースでは、QuickBootと富士通セミコンダクターのネットワーク待機応答LSI「MB86C36」を使い、ネットワークプリンタなどの待機時における消費電力を大幅に削減可能にするための技術デモも実施している(写真4)。
写真4の中央にある緑色の基板がプリンタへの待機指示およびパソコンなどからのネットワーク問い合わせに代理で応答する機能を備えている。右側にある液晶付きの青い端末はネットワークプリンタを模したデバイスで、QuickBootを前述のLinux機に搭載している。
基板に取り付けられた「節電」ボタン(写真5)を押すと、まず右側のプリンタの電源が落ちる。以後、プリンタに対するネットワーク経由の問い合わせなどに対しては、基板がネットワークプロトコルを解釈して代わりに応答する。代理応答で対応できない処理、つまり実際のプリント処理については、指示があると基板が即座にネットワークプリンタの電源を入れ、プリンタがQuickBootで瞬時に起動して印刷する仕組みになっている。
実際に、写真4左手のパソコンからプリント指示を送ってみたところ、それまで電源が落ちていたことなどまったく分からないほどのスピードで模擬プリンタ端末が起動し、印刷処理が実行されていた。ただし、実際のプリンタではウォームアップ処理などが加わるため、もう少し時間がかかるだろう。