「メールのコミュニケーションは破たんしつつある」。2011年5月10日に「Zyncro」(ジンクロ)の国内販売を発表したオーシャンブリッジ代表取締役社長の高山知朗氏は、会見の席上、同ツールの国内独占販売契約に至った背景をこう話した。

 Zyncroは、スペインのジンクロ・テックが開発した企業向けのソーシャル・コラボレーション・ツール(関連記事)。TwitterやFacebookのようなソーシャル・メディアが備えるリアルタイム性のあるコミュニケーション機能を持ち、企業ユーザー向けにクローズなコミュニティを構築しやすくしたツールである。短いメッセージの共有機能である「ウォール」、グループ単位でタスクの進捗管理な可能な「タスク管理」、部署やプロジェクトに応じて柔軟に作成できる「メンバー限定の情報共有」、クラウド上に保管されるファイルの「暗号化」、フォルダ構造によるファイル管理やデスクトップファイルとの同期が可能な「ファイル共有と同期」などが特徴。

 高山氏は、自身のこの数カ月の実感を踏まえつつ、「仕事に無関係なメールが増えることにより、重要なメールの見落とし、顧客対応の漏れや遅れが生じやすくなっている」との認識を示した。メールに代わるコミュニケーション・ツールとして、TwitterやFacebookなどのコンシューマ向けソーシャルメディアが注目を集めているが、高山氏によれば「外部からのノイズが多く、セキュリティに不安があるので、ビジネスでは使いにくい」という。そこで注目したのが、ビジネス向けに特化したソーシャル・メディアのZyncroだったという。

 5月10日の会見には、ジンクロ・テックからCEOのルイス・フォント氏が同席。「階層型の情報伝達では、悪意ある人の配下にあるグループに情報が正しく伝わらない」「ソーシャルメディアに慣れた若年層が会社に入ってくると、旧態依然としたコミュニケーション環境に愕然とする」など、同ツールの開発背景を説明した。同氏は「今後5年で、多くの企業が社内ソーシャル・ネットワークを持つだろう」と予想する。

 スマートフォン向けには、現時点でWebアプリとして提供済みであり、iPhoneやiPad版は正式サポートしている。国内では今後、Android版にも正式サポート対応の予定だが、BlackBerry版は正式サポートの対象外という。

 今後の目標として、初年度(2011年度)100ユーザー、2012年度には260ユーザーの獲得を目指すとした。同ツールは、5月11日~13日に開催される「クラウドコンピューティングEXPO春」に出展する。