写真1●ソフトバンクの孫正義社長
写真1●ソフトバンクの孫正義社長
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 ソフトバンクの孫正義社長(写真1)は2011年5月9日、同日に発表した決算会見の席上で、2011年度と2012年度の設備投資としてそれぞれ5000億円、2年で1兆円規模の投資を進める計画を明らかにした。

 孫社長は、東日本大震災によって「通信やインターネットが人々のライフラインになっていることを痛感。我々のネットワークはまだ十分ではなかった。さらなる成長の一番の近道は設備投資。今年と来年は基礎を固める」と語り、今年度と来年度において過去最大規模の設備投資を実施すると表明した。

 この設備投資額は、ソフトバンクモバイルが割り当てを希望している700M/900MHz帯の取得を前提にしているようだ(関連記事)。孫社長は1兆円のうち700M/900MHz帯への設備投資額の割合こそ明らかにしなかったが、「もし取れなければ1兆円よりも減るだろう。ただし、当然、我々に割り当てられるものと信じている」(孫社長)と強烈にアピールした。

東日本大震災で「基地局の冗長化の必要性を痛感」

 会見終了後、ソフトバンクモバイルのネットワークを統括している宮川潤一取締役専務執行役員CTOは記者の質問に答え、「今回の大震災で基地局の冗長化の必要性を痛感した。震災に強いネットワークを新たに作ろうとプランを立てている」と語った。

 既存の2GHz帯と重なるように、700M/900MHz帯の周波数帯を使って広いエリアをカバーするようなプランを練っているという。「これまでのソフトバンクモバイルの基地局の鉄塔は小さいものが多かった。震災時に通信を確実に確保できるようにバッテリーが48時間程度持つような40~50メートル級の鉄塔を新たに作り、トラフィックを運ぶ小さな局と組み合わせていきたい。これは現在持っている周波数帯の資産では難しい」(宮川CTO)。

 40~50メートル級の鉄塔は、ソフトバンク流のコストダウンの仕組みを取り入れたものになりそうだ。宮川CTOは「今年に入って自分たちなりのコストや工法で40~50メートル級の鉄塔がいくらで造れるのか、実験局をいくつか建てて実験してみた。今回それが見えてきたので予算化した」と語る。

 700M/900MHz帯を取得できたら、1~2年で1万局以上の大規模基地局を建設する計画のようだ。「日本全体の建設能力として40~50メートル級の鉄塔は年間で1万局と言われている。今回工法も工夫しており、それを遙かに凌駕するような速度で建設していきたい」(宮川CTO)。

 なお2010年度にソフトバンクモバイルは基地局倍増計画を進め、2011年3月末までに12万2000局の基地局数に達したと発表している。「こちらは人が住んでいる場所の電波環境を改善しようというプロジェクトだった。40~50メートル級の基地局を建てるプロジェクトは田舎など、電波が届かなかったエリアを改善する計画にもなる」(宮川CTO)。

決算は初の3兆円超え

 同日発表したソフトバンクの2010年度(2010年4月~2011年3月)の通期連結決算は、売上高が前年度比8.7%増の3兆46億円、営業利益が同35.1%増の6291億円の増収増益となった。東日本大震災による影響としては、144億円を特別損失として計上している。

 初の3兆円超えとなった売上高は、好調な移動体通信事業が大きく寄与した。純増契約数は353万2100件、端末の出荷台数は対前年度119万9000台増の1001万6000台、ARPU(1契約当たりの平均収入)は同140円増の4210円となっている。

 なお、業績予想は明らかにしなかった。

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