写真●OSSチャリティセミナーの会場。2011年5月21日に開催予定のオープンソースカンファレンス仙台実行委員会からのビデオメッセージも上映された
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 「震災復興支援サイトsinsai.infoは、オープンソースソフトウエア(OSS)だったから人々の力を結集できた」(sinsai.info 副責任者の三浦広志氏)---。2011年5月7日、震災復興支援イベント「OSSチャリティーセミナー」が開催。OSSを活用した復興支援プラットフォームsinsai.infoの活動報告や、OSSに関するセッション、募金やチャリティオークションなどが行われた。

 OSSチャリティーセミナーを主催したのは「オープンソースカンファレンス(OSC)」。2004年からオープンソース関連コミュニティが集まって全国各地でイベントを開催している団体である。2011年4月16日に神戸で開催したOSC2011 Kansai@Kobeでも震災復興支援のための募金を集めており、集まった20万8225円を日本赤十字社に寄付している。

震災後3時間台で立ち上げ

写真●sinsai.infoの活動状況を紹介する三浦広志氏
写真●sinsai.infoの活動状況を紹介する三浦広志氏
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 sinsai.infoは、東日本大震災に関する情報をボランティアの力により集約し、整理しているサイトである。サイトに投稿された情報やTwitterのつぶやきを集約し、地図上に表示する。プラットフォームとして、OSSであるUshahidiを使用している。

 被害状況や避難所、安否情報やボランティア募集、雇用情報など現在までに1万件以上の情報が登録され、月間100万以上のページビュー、50万以上のユニークビジターがある。最も多いのは仙台からのアクセスという。「病院が孤立して患者が困っているという情報がsinsai.infoに登録され、自衛隊に連絡がいき、救助された例もある」(三浦氏)。

 sinsai.infoは、東日本大震災当日の4時間未満で立ち上げた。迅速に開設できた大きな理由が、OSSであるUshahidiを利用したことだ。Ushahidiは、ハイチ地震やニュージーランド地震の際に災害情報集約システムとして利用された実績があるソフトウエアで、自由に利用できる。現sinsai.info代表の関治之氏は、このUshahidiをサーバーにインストールして利用を開始。関氏や三浦氏が活動しているボランティアによる地図作成プロジェクト「Open StreetMap」のメンバーなど様々な人々が集まり、プログラムのデバッグや情報の整理を始めた。

 集まった人々の力を結集できたのも、OSSであったことが大きかったと三浦氏は振り返る。当初は押し寄せたアクセスへの対応にも追われた。当初立ち上げたサーバーではさばききれず、Amazon Web Servicesにサーバーを移転した。「集まったプログラマは自分で問題を見つけ、(バグ管理システムの)Redmineに登録して、自分でつぶしていった。『OSSとはこういうものだ』という文化、倫理観を共有していたからこそできた」(三浦氏)。

のべ250人のボランティアが活動

写真●sinsai.infoの今後の活動構想
写真●sinsai.infoの今後の活動構想
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 プログラマに勝るとも劣らず重要なのは、情報をモデレートする仕事だ。UshahidiはTwitterに投稿された情報を自動的に収集するが、その分類やどれがオリジナルの情報なのか、信頼できる情報かどうかは人間が判断するしかない。このようなモデレータのボランティアも多数集まり、情報を整理していった。

 ボランティアとして活動しているメンバーは、プログラマやモデレータ、法務担当などのべ約250名にのぼるという。5月14日にはイベント「sinsai.infoシンポジウム」が行われるが、「このシンポジウムで初めて互いに顔を合わせることになるメンバーも多い」(三浦氏)という。

 ボランティアスタッフも継続して募っている。sinsai.infoでは、UshahidiのWeb APIを利用したウィジェットの作成を呼びかけている。また災害時の救援物資情報、ボランティアスタッフの情報などを管理するOSSであるSahanaを利用したサイトの構築を計画している。

 企業の支援も欠かせない。sinsai.infoはAmazon Web Servicesのクラウドサービスを無償で利用しており、ハートビーツが運用管理サービスを無償提供している。三浦氏の勤務先であるNTTデータでは、三浦氏をはじめとする約40人の社員に、勤務時間内にsinsai.infoのための活動を行うこと認めている。