写真●富士通の山本正已社長
写真●富士通の山本正已社長
[画像のクリックで拡大表示]

 富士通は2011年4月28日、2011年3月期の連結決算を発表した。売上高は前期比3.2%減の4兆5284億円、営業利益は同40.5%増の1325億円だった。一方、震災による特別損失を計上したことなどが影響し、純利益は同40.8%減の550億円となった。

 記者会見した山本正已社長(写真)は「部材調達や電力など不確定要素が多く、国内IT投資も不透明で合理的に算定するのが難しい」と語り、今期連結業績予想の公表を5月末以降に見送るとした。

 セグメント別に見ると、最大の「テクノロジーソリューション」の売上高は前期比3.7%減の3兆143億円、営業利益は同6.0%増の1628億円だった。

 減収となった要因は、システム開発などの「サービス」事業が失速したことだ。サービス事業の売上高は前期比4.8%減の2兆4195億円、営業利益は同8.0%減の1173億円だった。ハードウエアやミドルウエアで構成する「システムプラットフォーム」事業は売上高が同1.2%増の5948億円、営業利益は同75.1%増の455億円だった。

 サービス事業が減収減益になった理由について、加藤和彦CFO(最高財務責任者)は「英国政府の予算削減プログラムの影響を受けたほか、震災により国内ビジネスの増益幅が圧縮された」と説明する。

 パソコンや携帯電話などの「ユビキタスソリューション」セグメントは前期比で増収減益。半導体や電子部品などの「デバイスソリューション」は増収増益となった。

 震災により、半導体を製造する富士通セミコンダクターの岩手工場や、PCやサーバーを製造する富士通アイソテック(福島県伊達市)が被災した。この影響で、2011年3月期に棚卸資産の廃棄損などで116億円を特別損失に計上。出荷の遅れなどにより、営業損益でも130億円のマイナス要因となった。4月20日までに全ての製造工場で生産能力が100%に復帰したものの、原材料や部品の調達面で未だに懸念が残っているという。

 山本社長は今年度の重点経営施策として「製品の安定供給体制の再構築」「海外ビジネスの収益力回復」「先行開発の投資継続」の3つを挙げた。5月末以降に2012年3月期の業績見通しを発表するのと同時期に、新たに中期経営計画を策定して発表する考えを示した。

 節電対策については「(関東地域にある)社内の開発用サーバーの一部を、兵庫県と富山県のデータセンターに移すことを検討している。これにより、3~5%の節電効果があると考えている」と山本社長は語った。一方、顧客のデータを預かるデータセンターについては、「富士通のビジネスの柱」(山本社長)と位置づけ、自家発電設備を拡充するなどして100%の電力供給を続けると強調した。