写真●ユナイテッドアローズ 情報システム部の小森谷郷チームマネージャー
写真●ユナイテッドアローズ 情報システム部の小森谷郷チームマネージャー
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 「PCの業務をすべてiPhoneに移すと、アプリが複雑になってしまう。使い分けが大事だ」――。ユナイテッドアローズ 情報システム部の小森谷郷チームマネージャー(写真)は、2011年4月27日の「スマートフォン2011春」の講演で、スマートフォンを社内業務で活用する際のポイントについて、このように言及した。

 ユナイテッドアローズは衣料品販売を手掛け、全国に210店舗を構える。2010年9月に、店頭での商品在庫検索用の端末としてiPhone 4を導入した。カジュアルな商品を扱うブランド「Beauty&Youth」の5店舗で、活用中である。

 自社専用の在庫検索アプリケーションを、日本NCRに委託して開発した。商品のタグに付いている11ケタの商品コードを入力すると、店舗ごとにどのサイズがいくつあるかを一覧表示するアプリケーションだ。従来はレジカウンターやバックヤードにあるPCを操作しないと、こういった在庫情報を調べることはできなかった。

 販売担当者にiPhoneを持たせることで、店内のどこにいてもすぐに在庫を確認できるようにした。これにより在庫確認のために客を長時間待たせるケースが減る。販売機会のロスを削減できているという。その日の売り上げ上位10商品を調べる機能や、店舗ごとの売り上げ状況をリアルタイムに調べる機能も追加した。

 小森谷氏は、「店頭での在庫確認の仕組みが販売機会の拡大に大きく寄与したのは、当社が独自商品に加えて、国内外で買い付けた商品を販売するセレクトショップであることと関係がある」という。

 ユナイテッドアローズで扱っている商品のほとんどは、少量多品種。ある店舗で1点売れると、サイズや色違いの商品は置いていても、まったく同じ商品の在庫はない、といったケースがよくある。このため、顧客が要望する商品の在庫がどこにあるかを調べる作業が頻繁に発生する。

 「数年前から、店頭ですぐに在庫を検索できる端末を用意して欲しいという強い要望があった」と、小森谷氏は打ち明ける。iPhone4は、デザインや操作性を評価して採用を決めた。

 4月中に、導入店舗を10店にするほか、すでに導入済みの店舗の利用台数を増やす予定だ。在庫検索アプリケーションについては、電話機能との連携や、バーコードを読み取って在庫を検索する機能の追加を検討している。

 ただしそれ以上の機能強化については、予定はないという。「現場からは、さまざまな要望があがってきている。それらの多くは店舗に置いてあるPCで実現できているもの。iPhoneに多くの機能を詰め込み過ぎると、操作性が損なわれたり、ユーザーインタフェースが複雑になったりする」と小森谷氏はみている。iPhoneとPCをうまく使い分けて、業務の効率化や売り上げ拡大い役立てる考えだ。