ガバナンスにも指摘、「放送村の常識を押しつけられている」

 高橋委員は、鍵発行・管理組織の組織体制にも意見を表明した。「理事について『設立当初はNHKおよび在京民放5社から選任予定』とあるが、ここに公益理事が入るのが重要。一般企業の監査役に相当する監事も『民放連からの推薦者を想定』とあるが、これでは監査が甘くなるのではと懸念している。評議委員会も『有識者から数名程度選定』とあるが、選定基準も何も示されないのでは承認しろと言われても不服である」と指摘した。

 和知オブザーバーは、「デジコン委に諮らずに鍵発行・管理組織の組織体制を進めてよいのかというジレンマも持ちつつ検討を進めてきた。こちらでOKをいただいた上で具体的な人選や諸規定の策定に進みたいと思う」と回答。これに対し高橋委員は「それでは迅速性という点で問題があるし、『デジコン委で鍵発行・管理組織の組織体制のお墨付きをもらった』となると、我々デジコン委の役割にも疑問がある。放送村の常識を押しつけられている気がする」と切り返し、政府審議会の承認を得て進めるのではなく自主的に組織体制を構築すべきと突き放した。

 この点は村井主査も、「評議委員会がどういう意思決定をするのか、それを決めるのがガバナンス。そこにデジコン委が出てくるわけではないので、組織としての自立的なガバナンス、評議委員会の人選や監事の人選などを、透明性をもって進めていただきたい」と注文を付けた。

 高橋氏はこのほか、鍵情報の提供を申し込んで拒否された機器メーカーが不服審査する際の仕組みを明示することや、コンプライアンス違反が発生したときは常設の評議委員会で調査・処分などをするのではなく第三者委員会を立ち上げることなどを要望した。

鍵管理では「漏洩後の調査より漏洩前の管理の徹底を」

 暗号鍵の扱いについて指摘したのは西谷清委員(ソニー 業務執行役員 SVP)。「多くのメーカーなどが新保護方式に参加すると思うが、過去に携わった類似の暗号方式では、暗号鍵を受け取った側の管理が不十分で情報漏洩したケースがあった。B-CASのようにカードなら漏洩もしにくいが、新保護方式のようにソフトウエア方式となると漏洩のリスクも高まるし、調査も大変。管理する方をしっかりしてほしい」と指摘した。

 河村委員は、電波産業会(ARIB)が策定中の標準規格(STD)や技術資料(TR)が海外メーカーに対する非関税障壁にならないよう要望した。「B-CAS方式のデジタル放送が始まった当初、デジタルテレビに参入しているのは日本国内の有名メーカーばかりであった。規格の中に著作権保護と直接関係しない規定も多くあり、それを遵守するのはもちろん、翻訳するだけでも大変という状況があったと聞いている。今回もふたを開けてみたら国内の有名メーカーの製品しかないという状況にならないよう、公平な競争になるようにしてほしい」。

 村井主査は会合の最後に、「(鍵発行・管理組織の)基本的な考え方は、(新保護方式の概略を記した)デジコン委の第6次中間答申や前回会合で承認した技術的な仕組みに基づいていると思う。速やかに設立の準備を進めてほしい」とゴーサインを出した。その上で、「ガバナンスとして社会的な強さを持っているかどうかは厳しく見られるだろうし、そうした組織がどのように作られるかについて、いろいろな経験を我々の社会は持っている。透明性の担保された組織作りをしていただきたい」と語り、鍵発行・管理組織の公益性や透明性の確保について念を押した。