「既に賞味期限切れ」「前倒しも検討を」、導入時期に委員から注文

 これらの方針に対し、導入時期などをめぐり複数の委員から意見が出された。

 田胡修一委員(日立コンシューマエレクトロニクス シニアマネージャー)は、「(2011年7月から)1年以内に導入としているが、全国津々浦々で1年以内に導入なのか」とただした。これに対し大塚隆広オブザーバー(テレビ朝日 取締役)は、「時間がかかるとみられるのは鍵管理システムの開発、放送局の設備改修、メーカーの受信機開発。設備改修や受信機開発は相手がある仕事なので、私たちが聞いた希望的な工程を総合すると、1年以内をめどに開始できる見込みだ。全国での導入となると、各地のNHKと民放を合わせて250局くらいあり、時間がかかる」と語り、当初は一部地域での導入になるとの見通しを示した。

 高橋伸子委員(生活経済ジャーナリスト)は、「一昨年末の会合までにこうした方式ができれば良かったのだが、賞味期限切れではないか。約束を守れなかったことについて関係者すべてが反省すべき」と発言。新保護方式の導入時期の遅れが重なったことで、当初挙げられていたアナログテレビから地デジ対応テレビへの買い替え推進という新保護方式の導入目的が果たせなくなったことを批判した。

 デジコン委の主査を務める村井純氏(慶応義塾大学 教授)も、「新方式の議論を始めたころよりデバイスの機能が上がっており、フルセグのモバイル機器に対する期待感が高まっている。導入時期は2011年7月から1年以内と伺ったが、鍵発行・管理組織が設立されればその後のさまざまな手続きが進むし、放送設備の改修なども具体的な時期が見えるので、前倒しも含めた具体的なスケジュールを検討できると思う。早期実現に向けて取り組んでほしい」と語り、今後の取り組みで準備期間を短縮し、前倒しで開始できるよう要請した。

「地デジのみでは導入広がらない、無料BS放送にも新保護方式を」

 新保護方式は地上デジタル放送のみを対象としているが、この点に対する異議も出た。河村真紀子委員(主婦連合会 事務局次長)は、「多くの家庭ではNHKと無料BS放送は必要とされ、一方で有料放送のCSは必須ではないだろう。しかし、新保護方式は地デジのみ対象で無料BS放送は含まれていない。結局、お茶の間に置かれるテレビはこれまで通りB-CAS方式でCSへの対応を強制されることになりそう。B-CASと新保護方式の2通りを運営することで、かえってコストがかかりそうで残念。無料BS放送も新保護方式に対応できれば、今までのB-CASを必要としないすっきりとした形にできるのではと思う」と語り、無料BS放送にも新保護方式を適用すべきとの考えを表明した。

 これに対し和知オブザーバーは、「新方式に対するニーズをメーカー数社に聞いたところ、フルセグ対応の携帯電話機やタブレット端末、カーナビなどのニーズがあり、これならば地デジのみの対応で問題ないと考えた。これまでも地デジのみという前提で検討してきており、それが固まっていない段階で無料BS放送に対象を広げるとなると、時間がないし関係者の合意も得られない。地デジのみでご了解いただければと思う」と慎重な姿勢を示した。

 また、福田俊男委員(日本民間放送連盟 専務理事)は、「放送局としては、BS放送のうち無料のチャンネルのみという切り分けは難しい。また、お茶の間向けのテレビで地デジのみの機種も普及してきており、これであれば新保護方式を採用いただけると考えている。また、無料BS放送の事業者が将来有料化するという可能性もある。まずは地デジのみで新保護方式を始めるのが適切」とした。その上で、「無料BS放送が将来もそのまま無料放送を続けるとなれば、新保護方式も検討の余地がある」と語り、将来の対応放送拡大にも含みを残した。